克服すべき2つの課題
消費者が週当たりおよそ50ドル(約5600円)のガソリンではなく、1日当たり約1ドルの電気で自動車を走らせることを望んでいるとすれば、自動車メーカー各社のリーダーたちは嘆かわしいほど、準備ができていないということになる。
テスラと競合するためには、各社は2つの大きなハードルを乗り越えなければならない。マスクによれば、テスラのバッテリーはキロワット時当たりのコストが最も安価だ。それは誇張かもしれないが、各社はテスラに匹敵するバッテリーを作らなければならない。それができなければ、テスラに大きな優位性を与えることになる。
また、各社は顧客に、長距離の走行を可能にするための方法を提供する必要がある。それを実現できなければ、各社の顧客は「EVが2台なければ長距離を移動できない」ということにもなり得る。
大手各社が効果的にテスラと競合するための行動に出ない理由の一つは、そうすることが各社の既存の事業とのカニバリゼーション(共食い現象)を引き起こすからだ。
既存事業と競合して今ある利益を奪い、自社に優位性があるわけではない事業に大規模な投資を行うことについて、全ての関係者を説得できるだけの強さが各社のリーダーたちにあるとは思えない。マスクにそれができたのは、捕食されることになる「ICE車からの利益」がなかったからだ。
過去に見た構図
アップルが2007年にiPhoneを発売したとき、多くの投資家たちは、ノキアやモトローラ、ブラックベリー、ソニー・エリクソンなどの各社がすぐにアップルを潰すだろうと考えた。
テスラを巡って今みられるのは、それと同じ状況だ。最終的には自動車業界のリーダーたちがテスラの脅威を抑え込むと見込み、それに賭ける人も多い。各社には、それを行うだけのリソースがある。だが、いずれも迅速に対応していないことは明らかだ。
テスラ「モデル3」の本格的な競争相手が市場に出てくるまで、筆者はテスラに賭けることにしようと思う。