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小泉:サービスのローンチが13年7月で、テレビCMを始めたのが14年の5月。仰る通り、タイミングが早いと思われがちですが、フリマアプリは競合他社が1年ほど先行してローンチしていました。後発の僕らが1位を獲るためには、どこかでリスクを取っていかないといけない。

松本:当時はまだ課金する前でしたよね。

小泉:そう、まだ売り上げゼロでした。

松本:あれはGo Bold(注:メルカリが掲げるバリューの一つ。「大胆に行こう」の意)だなと思いました(笑)。ラクスルの場合は、すでにサービスを開始して2年経っていたのでリピート率やLTV(ライフ・タイム・バリュー)や利益率、回収期間まである程度は見えていました。でも、メルカリさんは課金前で売上がないタイミングでした。

小泉:これくらいの規模のお客様が集まって、手数料を10%取れればこれくらいの売り上げになるという試算はしていました。初期のテレビCMの前にはファイナンスを回して、リスクをヘッジしてからアクションを起こしています。

松本:スタートアップがテレビCMを打つときには、裏にファイナンスが必要ですよね。バランスシートを厚い状態にしておいて、何かあってコケても死なないようにしておかないといけない。

──テレビCMの打ち方でどのようなことを意識しましたか?

松本:ラクスルはオーソドックスでした。クリエイティブのパターンをいくつか制作し、まず地方からテスト。最もよかったパターンを関西や中京で打って、最後は関東に。博打せずに数字を確認しながら投下数を増やしていきました。 

小泉:僕たちは最初から全国で流しました。ラクスルさんのようなBtoB事業は、中長期的に積み上げていくことが重要です。それに対して、メルカリの領域はウィナー・テイクス・オール(勝者総取り方式)。人や情報が集まるほど価値も高まっていくので、先にマスを取られると、後からひっくり返すのが難しい。だから地方でテストせず、いきなり全国です。

工夫したのはサウンドロゴですね。メルカリは20〜30代の女性がメインの利用者。彼女たちに刺さるように音を高め、速めに調整し少し違和感があり引っかかりがあるようにしました。当時は知名度が高くなかったこともあって、調査すると40代以上では聞きとれない人もいましたが、結果的に20〜30代には特徴があって記憶の残るものになりました。

松本:ラクスルは逆にユーザーが明確ではなくて、クリエイティブを何パターンか制作して反応を探らざるを得なかった。ユーザーは男性と女性が6対4くらいの比率で、年齢層はメルカリさんのユーザーより少し上。結局、労働人口のボリュームゾーンに当てたものが一番よかったですね。

──キャズムを超えた後、どのようなマーケティング施策を展開したのでしょうか?

小泉:オンライン広告を常時やりながら、オフライン広告は衣替えの季節や新しい機能が追加されたときなど、必要なタイミングで展開しています。

松本:ラクスルはテレビCM中心ですね。Webマーケティングは、冊子や名刺、チケットを印刷したい人など、まずモノありきのお客様にとても効果的です。一方、テレビCMは少し意味合いが違って、ブランドの想起に効果的。初期はWebマーケティングにお金をかけたことで、安く印刷できることは、ある程度知られてきました。いまはテレビCMでラクスルのブランド想起を狙っている段階です。おかげさまで最近は「印刷といえばラクスル」という第一想起が生まれつつある。このようにマーケティングは、お客様の認知や想起に合わせて施策内容を変えていくことが大切なんじゃないか、と思います。

小泉:そうですね。僕たちは去年あたりまで、メルカリの認知とインストール促進を目的にマーケティングを行ってきました。しかし、すでにアプリをインストール済みのお客様が増えてきたので、ここ1〜2年は「こういうジャンルもありますよ」というマーケティングにシフトしてきています。メルカリはアパレルの印象が強いですが、たとえばカーパーツなども売り買いできる。そういったジャンルをお客様が想起しやすくするために、最近は趣味系の雑誌に出稿したり、お父さんを主役にしたラジオCMを展開したりしています。

松本:お客様は自分が一度使ったものを繰り返し使うことはあっても、サービス内の他のものには案外、目を向けてくれない。だから僕たちも広告で訴求する内容を少し変えています。最初は名刺やチラシを安く印刷できる点を強調していましたが、ラクスルは折込チラシやダイレクトメールのような集客サービスも提供しているので、最近はそちらをテレビCMで訴求しています。

村上 敬 = 文 西村裕介 = 写真

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