ビジネス

2018.11.05

「高収入への通行手形」米国MBAはなぜ人気が凋落したのか?

Robert Kneschke / Shutterstock.com


大学院は職業訓練校ではない

しかし、それが過熱することは危険でもある。大学院は職業訓練学校ではなく、2000万円も払う価値の半分は、絶えまぬ研究によって自らを進化させること、そういう学びの場で師と出会い、同窓をつくることにある。部分講習による大学の採算向上も結構なことだが、カネ勘定に走りすぎると、逆にそれが入らなくなってくるという事態に陥っていないだろうか?

MBAの志願者は、世界全体で見れば数は減っていないと、冒頭で紹介したGMATは伝えている。つまり、この4年間の志願者減少は、アメリカのMBAが、なにがなんでも手に入れたい「高収入&エリート集団への通行手形」だと見なされていた時代が、終焉を迎えつつあると見るべきなのであろう。

繰り返すように、本来、大学院は研究をするところであり、収入を増やすためのものではない。たとえばコロンビア・ビジネス・スクールは、社会貢献を実現するリーダーの養成と、経営のメカニズムを解析する学究集団の育成という、2つのミッションを掲げている。

MBAの本来の輝きと価値を取り戻すためにも、この際、このまま「通行手形」という意識が後退し、研究に喜びを感じあう学問の府に戻っていくことが大切なのかもしれない。

連載 : ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
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文=長野慶太

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