米国の連続爆弾事件 責任はトランプの「憎しみの心理戦」に

トランプ大統領(Photo by Scott Olson/Getty Images)


3つ目は、暴力の是認だ。良識のあるリーダーのほとんどはこの前で止まる。トランプはまず、自分自身を同一化すべき対象として感情的に位置づける。金持ちで、女性の性器をつかむことが許され、負け知らずの勝者になるには、自分のようになればよいのだ──と。そして次に、暴力行為に許可を与える。

有名な事例としては、抗議活動をした人を怒りに任せて殴りつけた支持者の一人を全面的に支持したことがある。また2017年の大統領就任から間もない頃には、シャーロッツビルで抗議活動に参加していた女性が支持者に殺害された際、そっけない反応を示したこともあった。先日の集会では、記者に対し暴力をふるった議員について「体当たりができるような男は、私好みの男だ」として支持を表明した。

世界に悪を解き放ったパンドラの箱の伝説のように、憎しみの炎は簡単には消せない。トランプ大統領就任の翌日に女性らが行ったデモ行進では、「Love Trumps Hate(愛は憎しみに勝つ)」というスローガンが多くの人に掲げられたが、悲しいながら、それは事実ではない。

虐待を繰り返す配偶者や親が暴力の合間に愛情表現をちりばめるのと同様、憎悪表現は空気を汚染し、団結や礼儀を保とうとすることは無力で偽りの努力であるかのように見せてしまう。

“政界の汚い詐欺師”ことロジャー・ストーンは著書『Stone’s Rules: How to Win at Politics, Business, and Style(ストーンのルール 政治・ビジネス・スタイルで勝つ方法)』の54番目のルールとして、「憎しみは愛よりも強力な動機になる」と書いている。トランプ大統領は、国を団結させる責任を取らなければならない。自分が解き放った憎しみを捕まえ、コントロールしなければならない。

憎しみの三拍子をもってして人々を率いるトランプ大統領には、支持者によるパイプ爆弾送付についての責任がある。現時点の報道では、犯人がこうした憎しみのメッセージに敏感だったことが示されている。だが、ガソリン入りのたるに火がついたマッチを投げ入れれば、炎が上がるのは当然のことだ。その場合、責任を取るべきは、マッチを投げた人なのだ。

編集=遠藤宗生

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