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2018.10.31

チームラボ 猪子寿之「2050年、人々は毎日を遊び尽くすようになる」 #Forbes2050

チームラボ代表 猪子寿之



チームラボ プラネッツ TOKYO DMM.com / teamLab

2050年の人類は今よりもっと遊んでいる


──なるほど。それでは、次に意志と身体を捨てる、という言葉についてもう少し詳しくご説明ください。

例えば、テレビの旅番組の風景を見て価値観や人生が変わった、という人は少ないでしょう。なぜなら、ただボーッと画面を眺めて世界に没入しているだけだからです。でも、バックパッカーとして世界を巡って衝撃的な体験をしてその後の人生が180度変わった、という人は一定数いる。

バックパッカーになれというわけではありませんが、このように、脳だけを喜ばせる娯楽よりも、「人々の営みが積み重なってきた歴史的な場所」や「人類の存在を越えた自然の営み」「芸術家が何らかの意味を見出し、形にした作品」などに対して身体で知覚し、認知し、考える。これこそが大事な行為であり今後、快楽にダイレクトなものから置き換わっていくのです。

──しかし、今の世の中を見ると携帯ゲームの普及など、「快楽にダイレクトなもの」が増えているように思えます。

本当にそうでしょうか? 限られた人たちが漫然と浪費している「快楽にダイレクトな時間」を奪い合っているだけではないでしょうか。僕たちが子どもの頃、人々はみんなテレビを見ていました。それが今はスマートフォンのゲームやSNSに置き換わっただけです。

──なるほど。

それに、今、美術館に行く人は増えているし、海外旅行をしたいという人は増え続けている。言葉にしなくても誰もが意味のある体験、価値観を変える出会い、つまり本当の意味での遊びを求めているんです。

──そのような変化の要因として、テクノロジーの発達は大きいのでしょうか?

いえ、それは関係ありません。20世紀以降、頭だけを喜ばせるものを作りやすくなった、という面は少なからずありますが、今、「意味のある体験」が求められているのは単純に人々が「意味のある体験に出会ってその価値にようやく気がついたから」です。

遊びの本質は新しく何かを知るとか、自分の価値観を広げたり、変えたりするものであり、そういうものにこそ、人は生きる意味を見出す。きっとそう遠くない未来、表層的なものは淘汰され、2050年は、多くの人は世界中を旅したり、美術館に行ったり、はたまた何らかの創作活動をして遊んでいると思います。つまりもっと毎日を遊びつくそうとする方向に人類全体が進んでいるでしょう。

いのこ・としゆき◎アート集団チームラボ代表。チームラボは、アートコレクティブであり、集団的創造によって、アート、サイエンス、テクノロジー、デザイン、そして自然界の交差点を模索している、学際的なウルトラテクノロジスト集団。https://www.teamlab.art/jp/

取材・文=松浦朋希 写真=帆足宗洋(AVGVST)

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