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2018.10.30

スイスで勃興するフィンテック4社、仮想通貨ICOで成功事例も

Fedor Selivanov / shutterstock

ヨーロッパのフィンテック都市といえばロンドン、ダブリン、ベルリンが有名だが、今それらを追い上げているのが、チューリッヒ、ジュネーヴ、ローザンヌなどのスイスの都市だ。

世界知的所有権機関(WIPO)が米コーネル大学、仏INSEAD(経営大学院)とともに発表する「グローバル・イノベーション・インデックス」で最も革新的な国にランクされたスイスは近年、国を挙げてフィンテックのグローバル・ハブ化を目指してきた。

その結果、グローバル展開する欧州のフィンテック企業の推定10%がチューリッヒを中心としたスイスに拠点を置き、ツークのような小さな街までもが「クリプトバレー」と呼ばれる仮想通貨やブロックチェーン系スタートアップの集積地になっている。

スイスのスタートアップの強みの一つは、若い才能だ。平均年収と生活水準が高く、税率や失業率の低いスイスでは、大学を卒業した後に国内に留まる若者が多い。スイスのフィンテックのスタートアップ各社は、高い報酬を出して優秀な人材を獲得しようとしている。

また、スイスの資金調達に関する法規制がヨーロッパの他国と比べて緩いことも、スタートアップにとって有利だ。エンジェル投資家やVCのネットワークが拡大するにつれて、初期段階のスタートアップに対する投資は増えている。

Startupticker.chとSwiss Private Equity & Corporate Finance Association (SECA)の調査によると、2017年は総額9億3800万スイスフラン(約1058億円)がスイスのスタートアップ175社に投資された。

さらにスイスコム、ノバルティス、エフ・ホフマン・ラ・ロシュといった世界有数のグローバル企業が身近に存在することも、大手への売却や提携を望むスタートアップにとって好都合だと言えるだろう。

注目のフィンテック企業4社を紹介する。

Splendit

学費を必要とする学生と個人投資家をつなぐP2P(個人間)学生ローンのオークションプラットフォーム。2011年に元銀行マンのFlorian K üblerとMichel Lalive d’Epnayが創業した。学生は銀行のローンよりも低い利息で学生ローンを組むことができ、投資家も通常の投資にかかる複雑な手続きや手数料に煩わされずに持続可能な投資が行える。Splenditは両者の借入手続き、送金手続きも行う。

Proxeus

誰にでも比較的安価にブロックチェーンベースのアプリケーションを開発できるツールを提供。創業者のAntoine VerdonとPatrick Allemannは、「ブロックチェーンのWordPress」を目指している。

今年前半、自社トークンXESのICOによって2500万ドル(約28億円)を資金調達した。スイスのブロックチェーン・仮想通貨のスタートアップを牽引する企業の一つであり、2018年のスイス・フィンテック賞(アーリーステージ部門)を受賞。

CashSentinel

Sylvain Bertolusが2014年に創業したEコマースの決済サービスプロバイダ。エスクローエージェント(代金と商品の安全な交換を保証する第三者)とモバイルウォレットを掛け合わせたサービスを提供し、手軽かつ安心な支払いを可能にする。

中でも、従来は小切手や銀行口座振込などによる支払いが必要だった新古車の売買を劇的に効率化した。主にEC、銀行、保険業界のクライアントを持ち、毎月何百万ユーロ相当の取引を処理している。

Foxstone

土地や建物を売りたい人と投資家を結びつける不動産のクラウドファンディングプラットフォーム。2016年に創業。創業者らは不動産投資の民主化を目指しており、最低投資額を2万5000ドルと少額に抑えることで、より多くの人々に不動産投資の機会を提供し、投資家のポートフォリオの多様化を促している。

編集=上田裕資

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