空港のAI導入、検疫作業も探知犬の配置も効率化

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年間約8000万人が入出国すると言われている韓国では、ここ数年、違法搬入物の摘発も増加傾向にある。国を代表する空の玄関口・仁川国際空港では、2015年以来、違法搬入物の摘発件数が毎年12%以上増加。摘発によって徴収される罰金の総額も、毎年30%ほどの増加率を記録している。

最近では、中国の旅客機で搬入された畜産物のなかから、ワクチンがまだ開発されていないアフリカ豚コレラウィルスの遺伝子が検出されるといった事例も報告されており、検疫の強化が社会的・経済的リスクを排除するための重要な課題として認識され始めている。

そこで、韓国の検疫当局はさまざまな施策を実施しているが、なかでも重宝されているのが人工知能とビッグデータだ。

検疫を主管する国家情報管理院と農林畜産検疫本部が実際に行っている事例としては、機械学習による“違法搬入確率予測”がある。人工知能に、約50万件におよぶ旅客機の入港情報、約37万件の検疫・摘発結果、検疫探知犬の配置状況などを学習させ、重点的に調べるべき航空機を割り出すといったものだ。その分析結果は現場に反映され、検疫探知犬の最適な配置などに利用されている。

なお興味深いのは、その検疫探知犬の配置も「探知犬最適配置アルゴリズム」によって自動で提示されるという点だ。テストの結果、人間の経験に頼った配置よりも、約24.4%高い精度で摘発できることが確認されたという。農林畜産検疫本部側は、今後もビッグデータや人工知能を伝染病や植物病害虫の遮断に積極的に利用していきたいとコメントを発表している。

日本の空港においても、通訳や案内などホスピタリティ向上のため、また入出国審査時の顔認証などに人工知能が利用されるケースが増え始めている。直近では、NECが財務省から税関検査場の顔認証システムを受注したとのニュースも報じられた。

東京五輪を控え訪日外国人数が年々増加しているなか、その玄関口となる空港の業務効率化や水際対策を支える人工知能の活躍に注目していきたい。

文=河鐘基

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