シナーは先日フェイスブックに動画を投稿し、次のように述べている。「ビーガンチーズについて考え始めたとき、人から『もう一度起業するの?』と聞かれた。私は『いや、私にはビジネスの才能がないので』と答えた」
しかし、もう一度起業に挑戦するようビーガンコミュニティーから励まされたシナーは2014年、ミヨコズ・キッチン(Miyoko’s Kitchen)を創業。当初は小さなビーガンチーズ店とオンラインビジネスを経営する予定だったが、需要は急激に伸びた。そこでシナーは、ビジネス規模を素早く拡大する方法を見つけることができれば、動物由来の乳製品から植物由来の製品へと移行する世界的な流れを加速できることにすぐに気がついた。
ミヨコズ・キッチンは昨年、900万ドル(約10億円)のベンチャー投資資金を確保し、カリフォルニア州ソノマにある約2800平方メートルの新施設に移った。同社は現在、ロケットスペース(RocketSpace)とラボバンク(Rabobank)が開設し、食品分野の大企業と小企業を引き合わせることで急速な成長を目指す食品・農業アクセラレータ、テラ・アクセラレータ(Terra Accelerator)に参加する新興ブランドの一つに選ばれている。
テラ・アクセラレーターは、食品大手のネスレを、植物由来食品分野の新興企業3社と結びつけた。この3社は、ビーガンチーズやバターを生産するミヨコズ・キッチン、農家と直接協力し、ジュースやスプレッドを作るための農産物を調達するヒア・フーズ(Here Foods)、遺伝子組み換え食品を使わずゆっくり調理したスナックを製造するジャクソンズ・オネスト(Jackson’s Honest)だ。
テラ・アクセラレータもネスレも、参加するスタートアップに金銭的投資は行わず、株も取得しない。このモデルは、動きや変革に鈍くなりがちな大企業と、次のレベルに到達するリソースが不足しがちなスタートアップにとって相互互恵的な学習モデルに近い。
ネスレ米国のオープンイノベーション部を率いるアシュリー・アダムズは「ネスレや他の大企業は、こうした小さなブランドの多くから現在、プレッシャーを感じている」と述べた。「何かを一緒に作り上げ、試験し、共に学びを深めることには大きな意味がある。どちらの側にも学ぶことがある」