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国際モータージャーナリスト「ライオンのひと吠え」


GT選手権には2つの役割があると言える。1つは、世界一のバーチャル・ドライバーを見つけ出すこと。もう1つは、GTアカデミーと同様に、本物のレースに参戦する本物レーサーを育成することだ。FIAのトッド会長はこれらの結果を楽しみにしているようだ。

つまり、第一回のGTアカデミーに優勝した元ゲーマーのルーカス・オルドネスが、数年も経たないうちに、ルマン24時間やニュルブルクリンク24時間の表彰台に登ったように、GT選手権で勝ち抜いた選手の今後に期待しているというわけだ。



それでも、「グランツってリアルワールドのレースには、本当にそんなに効果があるの?」と疑問を持つ読者もまだ多いことだろう。しかし、グランツは確実に本物のレーサーを作り出す能力を持っている。ここで、自分の体験を少しだけ語らせてもらおう。

開発者が証明した「リアルに通用する力」

実は僕は2010年に、グランツーリスモの創立者兼プレジデントの山内一典氏などとチームを結成して、ドイツのニュルブルクリンク24時間レースに挑んだ。全長25kmと世界一長いこのコースを覚えるのに、僕はグランツでサーキットを100周以上回った。その後、練習として本物のコースを走ってみたら、自分の限界の93%ほどが発揮できた。本番のレースでは、100%は確実に出せた。グランツのおかげだ。

でも、一番驚いたのは、山内氏が見せたスゴすぎる技だ。本物のニュルブルクリンク24時間レースの前夜に、同氏はグランツのシミュレーターで、レクサスIS-Fのレースカーで9分45秒の予選タイムを出した。グランツが登場した1997年から、山内氏はゲームの開発のためこのコースを何千周も走りこんでいる。だから、そんなに速いタイムが出たのだろう。

当然、リアルワールドでも同氏はドライバーとしてかなりの才能を持っている。すると、翌日の本番レース、決勝で目を疑う光景が! 山内氏が出した最速ラップは何とグランツと同じタイムの9分45秒。サーキットを正確に再現しているゲームだからこそ、走りこめば走りこむほど、確実にタイムが出る。それを開発者本人が証明したのだった。



そういう開発者だから、優勝者に授与されるトロフィも特別だ。未来派の彫刻家、ウンベルト・ボッチョーニが1913年に手がけた「空間における連続性の唯一の形態」をモチーフに、グランツを製作するポリフォニー・デジタルの手でリプロダクトしている。

さて、グランツで走りこんでモナコの決勝に参戦する3人のうち、世界一の座を勝ち取り、レーサーとして活躍するのは誰だろう。楽しみだ。

連載:国際モータージャーナリスト「ライオンのひと吠え」
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文=ピーター ライオン

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