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2018.10.29

ユニコーンはどこへ行く? ベンチャー投資ブームはピークアウトか

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企業ベンチャー投資(CVC)のリスク

しかし、ベンチャー投資は常に株式市場と連動して浮き沈みを繰り返してきた。

10月に入って世界の株式市場は金利上昇や貿易摩擦懸念で急速に冷え込んできた。市場センチメントがここから更に悪化したり、企業の業績悪化でキャッシュに余裕がなくなるとベンチャー投資への資金の流れが止まってしまうかもしれない。

ベンチャー投資は企業業績のリスク要因になることもある。企業のVC投資は、連結会社や持分法適用会社としての開示を避けるために2割以下の保有率に抑えられる場合が多く、外部からは中身が見えにくい。しかし、非上場株式であっても保有価値が著しく低下した時には減損処理が必要となる。

2000年にITバブルが弾けた時に、マイクロソフトは日本円で6000億円以上の投資損を計上した。ITバブル崩壊の後、ソフトバンクの株価が数カ月のうちに40分の1、光通信株が60分の1と「つるべ落とし」となった記憶も新しい。

キャッシュリッチなアップルも意図的に1000億ドルの負債を抱えているが、企業ベンチャーでもヘッジファンドのようにレバレッジ(借金のテコ)をかけて資産運用をしているところもある。レバレッジは投資リターンが負債調達コストを上回って好調な時には利益を増大させるが、下回る時には逆に損失が膨らむから要注意だ。

情報リスクにご用心

今の時代は、普通の個人でもベンチャー投資家になれる。日本でも金融商品取引法が改正され、2015年からインターネットのクラウドファンディング投資で募集総額1億円未満、1人50万円以下なら個人でもベンチャー投資ができるようになった。

しかし投資をする人は、ベンチャー投資は公開企業の株を買うよりずっとリスキーだということを肝に銘じるべきだろう。

ベンチャー投資の成功率は一般的に1割程度で、最初の数年で半数のスタートアップが頓挫すると言われる。「成功率が低い」というより、「普通は失敗する」と言い換えた方が妥当だ。プロのVCファンドが失敗しても潰れないのは、顧客投資家から運用資金の2%程度をマネージメントフィーとして受け取っているからに過ぎない。

公開企業と違って情報開示が限定的なことにも気をつけたい。怪しげな商品の掲載や投資資金の流用や持ち逃げ、クラウドサイトの運営者自体による詐欺など、世界中であきれるような内容の「クラウド詐欺」が多く発生している。

発案者が誰か、信頼出来る審査を経ているか、事業の実現性やクラウド運営者の実績などをじっくり見極め、実態が確認できるものでなければ、心に訴える謳い文句であっても安易に飛びつくべきではない。

メディアで騒がれるような何千倍の投資リターンといった大成功は実に稀だ。滅多に巡り合わないからこそ、「ユニコーン」などというまぼろしの動物の名前がついているのだ。

連載:投資マネーから見た世の中
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文=小出フィッシャー美奈

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