LGBTからダイバーシティを考える



「若い世代では理解のある人が増えてきた」と杉山文野

村上:最初は当事者グループと会話することから始めました。本人たちがどんな風に考えていて、何に傷ついてきたのかを知らなければ解決できません。僕自身が彼らを知るのと同時に、社内の人間にもLGBTについて正しく知ってもらうために活動をしてきました。

ヤフーは最先端のインターネットサービス企業です。自分の「知らない」がほかの誰かを傷つけることになるのなら、それはインターネットの原則である情報共有の理念を裏切ることになります。だからまずは、徹底的にLGBTについて、知ってほしかったんです。

具体的な取り組みとしては、まず役員を対象に研修を開き、社内の規定を変えました。慶弔祝い金とか介護休暇とかは今まで法定婚を前提にして作ってあったので、その前提を変えることにしたんです。

その時に、同性パートナーシップだけではなく、事実婚なんかも含めて規定を作ったので、当事者の人たちにはすごく喜ばれましたね。これからはLGBTに限らず多様な生き方が認められて、それを支援できる企業が増えればと思います。

差別している人の「自分はLGBTに関係ない」という意識

杉山:差別をしている人が、LGBTについて「知らない」からこそ、悪気のない差別をしている現状はありますよね。僕も自身がトランスジェンダーであることをカミングアウトするときに両親と揉めたことがあったのですが、その時に「ごめんね、知らなかったのよ」と言われました。

「知らない」ことが当たり前だった年代の人たちがいることはわかりますが、今は情報も手に入れやすくなったので、段々「知らない」では許されない社会になってきたと思います。

村上:まずは、多くの人が無意識のうちに異性愛を前提にしてしまっていることに気づいてほしい。独身の男性社員に結婚や彼女のことをずけずけ聞き、飲み会の二次会ではキャバクラに行くというような、「男はみんな女が好き」を前提にした男社会の空気を変えたいんです。

杉山:今企業で力を握っている世代の男性には、意識せずにそういうことを言ってしまう人も多いですよね。

村上:これは知らないことを理由に悪意なく差別をすることと同じです。でも、彼らは本当にLGBTについて知らないし、そういうことは自分には関係ないと思っている。研修では講師からていねいな説明を受けても、結構な人数の男性が「自分の周りにそういう人はいないし、見たこともない」と本気で言うんですよ。

社内研修の講師を男性社員に任せていたことがあったのですが、実は彼が社内でカミングアウトをしていなかったLGBT当事者で。彼が「LGBTは実は皆さんの近くにいるんですよ。実は僕、ゲイなんです」と言うと、みんな椅子から転げ落ちるくらい驚いていました。

杉山:そういう驚きを経験することで、身の回りにLGBT当事者がいるかもしれないと思ってもらえるのなら、やはりカムアウトは大切ですよね。社内だけではなくて、取引先やお客様の中にも必ずLGBT当事者の方はいるはずです。

村上:昔とは、経営者の姿勢が変わってきています。いま大切なのは「共感」。これまでシリコンバレーではなんでも自分でできるスーパーマンがリーダーを務めることが多かったですが、最近は共感でグループをまとめていく人も多いです。リンクトインの社長も、共感タイプ。僕は社長のそういう考えに共感して入社を決めました。

杉山:共感は大事な要素ですよね。前回お話しした勝間和代さんはバリバリ働いてハッキリ発言する方ですが、カミングアウトによって親しみやすさが増したように思います。ある種の「弱さ」が見えると、信頼が深くなりますよね。

村上:何か取っ掛かりがあると。コミュニケーションはグッととりやすくなりますよね。

対談の続きは明日公開。誰もが知らないうちに当事者になってしまう「LGBT差別」について二人が語る。

文=野口直希 写真=山田大輔

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