ビジネス

2018.10.26 12:30

廉価版テスラ「3万5000ドル」モデル納車までの遠い道のり


3万5000ドル版では利益が出ない

マスクは、2016年3月にモデル3の3万5000ドル版を発売すると発表し、テスラファンを驚かせた。マスクは、付属品抜きでも同カテゴリーのどの車両よりも優れていると述べていた。テスラが購入希望者からデポジットを受け取り始めて31ヶ月が経った現在、このモデルをまだ切望するロイヤルな顧客がどれだけ残っているかは不明だ。

興味深いことに、テスラは「完全自動運転機能(Full Self-Driving Capability)」のオプションを全てのモデルから削除した。これまでは、5000ドルのオートパイロット機能に3000ドルを追加すれば完全自動運転機能を搭載することができた。

マスクは2016年10月以来、テスラ車には自動運転に必要なハードウェアが搭載されており、あとはソフトウェアとAIを完成させるだけだと述べてきた。それから2年が経ったが、自動運転技術がどこまで進展したか明らかではない。また、同社はこれまでに完全自動運転機能を購入した顧客の数を明らかにしていない。

マスクは、ツイッターで完全自動運転機能の販売を取りやめたことを質問されて次のように答えている。「1週間はメニュー外で提供している。多くの混乱を招いたために販売を中止した」

テスラの広報担当者にコメントを求めたが、回答を得ることはできなかった。

テスラが3万5000ドル版のモデル3をいまだに提供できていない理由は明白だ。それは、同社に資金的な余裕がないからだ。3万5000ドル版では利益が出ないため、テスラはモデル3より高額なグレードや、フラッグシップモデルである「モデルS」やクロスオーバータイプの「モデルX」の販売に重点を置いているのだ。

これらのモデルは0-60mph加速で驚異的な記録を達成しているが、そのために必要な機能を追加するとモデル3が8万ドル、「S」と「X」は15万ドル(約1690万円)以上となり、テスラが目指すマス市場向けにはほど遠い価格になる。

編集=上田裕資

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