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同じように、人工知能(AI)もクラウドから小売りに至る、かつては別種の製品ラインだと見られていたものをつなげていくだろう。例えば大成功を収めたエコーは、「アマゾンはハードウェア会社なのか、ソフトウェア会社なのか」という、前出のウィルケの実存的な問いの意味を失わせた。エコーはAI中心のソフトウェアで動く、事実上のハードウェアなのだ。それがアマゾンの売り上げを伸ばし、コンテンツを充実させる。ベゾスは次のように語る。

「他の技術と比較して機械学習が興味深い点は、いくらでも水平展開できることだ。企業であれ、政府であれ、改善を図れない部門は1つもない」。

大騒ぎを巻き起こした第2本社の誘致合戦すらも、アマゾンの水平的な視野を物語っている。もっとも、アマゾンにとって勤務地はいずれ重要ではなくなっていく、とベゾスは考えている。

「うまく管理すれば、社員全員が同じビルや同じ都市にいる必要はなく、同じタイムゾーンにいる必要さえない。ロードマップに沿って仕事を進めればいいんだからね」

ベゾスにとっては、そのロードマップ作りが「仕事のほぼすべて」であり、日常業務は部下に任せている。長期的な戦略を考えるのは、かねてアマゾンが得意とするところ。さらにAWSが稼ぎ出すキャッシュのおかげで、ベゾスはこの小売業界の巨人をほぼ利ざやゼロで極めて効率的に経営し、広範囲にわたって投資できる。

「私が目の前の1日に引きずり込まれることはめったにない」と、ベゾスは明かす。

「2〜3年先のことを考えている。うちの経営チームも大半が同じ姿勢で臨んでいるよ。四半期決算を発表すると、友人たちは『よくやった。素晴らしい四半期だ』と祝ってくれる。すると、私はこう答える。

『ありがとう。でも、この四半期は3年前に準備したものだ』と。今の私は、21年に巡ってくる四半期のことに取り組んでいるんだ」

このような考え方こそが、無数の業界に属する企業をすくみ上がらせる所以だ。

「アイデアはいくらでも浮かぶ。こうしている間にも思い浮かぶし、1時間もあればホワイトボードを100のアイデアで埋められる」と、ベゾスは言う。

「週に一度もブレインストーミングが行われなかったら、私はスタッフに苦情を言うよ。『頼むよ、私を助けてくれ』とね」

アメリカの企業よ、留意するがいい──。イノベーションを起こすか、さもなければジェフ・ベゾスに先を越されるかだ。


ジェフ・ベゾス◎アマゾンの創業者兼CEO。米ヘッジファンドDEショーのIT部門副社長を経て、1995年にインターネット書店を創業。同社を率いる傍ら、宇宙ロケット開発企業「ブルーオリジン」を立ち上げたり、米紙「ワシントン・ポスト」を買収したりするなど、幅広く活躍している。2018年の「フォーブス 世界のビリオネアランキング」で初の首位に。

文=ランドール・レイン 写真=マイケル・プリンス, gettyimages 翻訳=町田敦夫

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