PC画面上で物語が進む「search/サーチ」に映画の未来を見た

映画「search/サーチ」より

映画「search/サーチ」より

映画「search/サーチ」は、全編がPC(パソコン)の画面上だけで進行する作品だ。観客は終始、PC上で展開されるフェイスブック、インスタグラム、Facetime、ユーチューブなどの画像や映像、また打ち込まれるテキストメッセージから、ひとりの少女の、失踪の謎をたどることになる。

PCの画面だけで完結する映画は、「search/サーチ」が初めてではない。2015年に発表された「アンフレンデッド」(レヴァン・ガブリアーゼ監督)という作品も、最初から最後までひとつのPC画面が映されているだけで、スカイプでチャットを交わす男女6人と、そこに紛れ込んだ謎の「人物」とのバトルが描かれていく。

「アンフレンデッド」は、物語の進行とともに、登場人物たちが1人ずつ残虐な方法で殺されていくというホラー映画。系譜としては、一人称視点によって撮影され、低予算ながら全世界で爆発的ヒットを記録した「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」や「パラノーマル・アクティビティ」などの流れを汲む作品だ。

実は、「アンフレンデッド」と「search/サーチ」は、同じプロデューサー、ティムール・ベグマンベトフのもとでつくられており、全編がPC画面で構成されているのは一緒だが、後者は、前者をさらに進化させ、アルフレッド・ヒッチコックも顔負けの、本格的ミステリー作品となっている。

二転三転、予想外の結末へ

「search/サーチ」は、PCにデータとして収められた家族の「想い出写真」の映像から始まる。主人公であるデビッド・キムが、PC上の画像ファイルを開くと、そこには失踪することになる16歳の娘、マーゴットの成長記録が現れる。また、別のファイルには3年前にがんで亡くなった妻のパムの在りし日の姿も。キム一家の「歴史」が、このファーストシーンで語られていく。

妻が亡くなって以来、デビッドと娘のマーゴットの関係がぎこちないものになっていることや、それを心配するデビッドの弟ピーターの存在、そして彼が大麻を常習していることも、PCの画面だけで巧みに描かれていく。「一家の歴史」から続くこれらの導入部は、とてもよく考えられており、瞬く間にPC画面に引き込まれていく。

そして、マーゴットの失踪。まず、デビッドのPCに「今日は友人の家で勉強会。徹夜になるかも」というテキストメッセージが入る。深夜になって、マーゴットから着信が入るのだが、テビッドは気づかず、そのまま朝に。翌日、デビッドが手段を尽くして、マーゴットに連絡を入れるが、返事はなく、彼女の行方はわからない。


映画「search/サーチ」より

デビッドは知人やマーゴットの友人に、軒並み行方を尋ねるのだが成果はなく、ついにはパスワードを割り出し、彼女のPCにアクセスする。マーゴットのSNSを覗くうちに、デビッドは自分の知らなかった彼女の実像に突き当たり、愕然とする。映されるのはPC画面だけなのだが、次々と展開していくサスペンスの盛り上げ方は、実に水際立っている。

警察も動き出し、ヴィックという女性刑事が捜査に乗り出すが、PC画面上に、防犯カメラやニュースの映像なども映し出され、マーゴットの失踪に迫っていく。ディテールまで練りこまれた脚本が素晴らしく、「鍵」となるセリフや小道具が随所に盛り込まれ、事件は二転三転、予想外の結末へと導かれていく。


映画「search/サーチ」より
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文=稲垣伸寿

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