世界に広がる孤独の脅威 心の健康に大きく影響

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今月10日の世界精神保健デーは、携帯電話の使用をやめることや運動、セラピーに行くこと、正しい食事を取ることなど、心の健康に影響を与えるさまざまな個人的習慣を改めて思い出す機会となった。また、うつ病を抱えている友人や家族に手を差し伸べること、あるいは自分がこうした症状を抱えている場合は助けを求めることなどの必要性を確認する機会も多くあったはずだ。

これらはもちろん重要なことで、価値ある習慣だが、それよりも大きな問題があるかもしれない。それはそもそも、なぜこれほど多くの人が心の問題で深く苦しんでいるのかという点だ。臨床的うつ病を患っていなくても、不幸せな気分やむなしさなど軽度の症状に悩む人は多い。

全ての要素を考慮すれば、孤独感は心の健康に対して、現時点で最大の脅威になるかもしれない。これは、過去数年間でますます多くの研究が行われた結果明らかになっている。米国では、親友が1人もいない人は過去数十年で3倍になった。

また、カイザー・ファミリー財団が先日発表した大規模な調査は、米国・英国・日本における孤独感のパターンを調査した。その結果、回答者の3分の2は、近くに住んでいて自分を支援してくれる友人や家族が数人しかいない、あるいは全くいないと回答した。また、10人に2人は多くの時間、あるいは常に孤独に感じると回答した。

さらに、米医療保険大手のシグナが今年前半に発表した調査では、米国人の約半分が時々、あるいは常に孤独に感じると回答した。米医学誌、米国老年精神医学ジャーナル(The American Journal of Geriatric Psychiatry)によると、一人暮らしが多く、既に配偶者や友人と死別している可能性が高い高齢者の間では、その数はさらに増加する。

英国では同問題への真剣な取り組みが始まり、テリーザ・メイ首相が「現代の生活の悲しい現実」と呼ぶ状況に取り組むため、孤独担当大臣が任命された。

現代の生活が、私たちの心の健康に欠かせない社会的つながりを弱めているのは事実だ。人間は進化の結果、非常に社会的な生き物となった。何千年もの間グループで生活してきた私たちにとって、現代のように隔離された生活を送ることは人間の本質的な心理的ニーズに反する。

家族から何百、何千キロと離れて暮らす人は多く、人間が進化の結果と生活してきた村のような居場所を持つ人はほどんどいない。子どもを育てる場となるとなおさらだ。

これは、大人や高齢者にとどまらない。8~19歳ぐらいの子どもや若者も、おそらく大人と理由は異なるものの、同じ気持ちを感じているようだ。こうした年代の子どもの生活では携帯電話やパソコンがより大きな役割を果たし、社会的生活も少なくとも同レベルの影響を受ける。
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翻訳・編集=出田静

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