深セン大学コンピュータ学部の出身だが、在学中に株価予測ソフトを開発するなど、学生時代からその才能は際立っていた。卒業後は通信企業に就職するが、自宅にパソコン通信サーバーを開発し、腕自慢のハッカーが集うネット掲示板の管理人として一目置かれる存在へとのしあがっていった。その影響力を生かし、名うてのエンジニアを集めて、98年にテンセントを創業する。
最初に開発した製品がメッセージアプリのQICQ。人気ソフトのICQと機能もそっくりだ。
米AOLの警告を受けてサービス名をQQに改名するが、ICQやマイクロソフトのメッセンジャーを蹴散らし、中国トップの座をつかむ。QQ以降も後発で他社と類似のサービスを出すことが多く、「模倣企業」と陰口を言われることも多かった。それでもマーは動じない。
「アイデアはシェアされて当然、勝負を決めるのはいかにいいプログラムを書けるか」という“ハッカー・カルチャー”がテンセントには根づいている。
中国といえばアリババグループとテンセントの二強が知られるが、その企業文化は正反対だ。文系出身でトークの達人のジャック・マーが創業し、ネットモールという商人向けビジネスを展開してきたアリババグループ。理系出身で言葉よりもプログラムというマー化騰が創業し、ひたすらソフトウェアに注力してきたテンセント。まさに好対照だ。
2000年代後半、テンセントはツイッター型のSNS「ウェイボー」の台頭、スマホシフトという課題に直面するが、11年に新サービス「微信」(WeChat)を生み出す。基本はメッセージアプリだが、決済などさまざまな機能を搭載する。MAU(月間アクティブユーザー)はQQを抜き、10億人に到達。中国最強のスーパーアプリとなった。