ビジネス

2018.10.25

社会の流れから「次の広告」を考えた──佐藤裕介が語る、hey創業の舞台裏

グッドパッチの土屋尚史(左)、heyの佐藤裕介(右)


STORES.jpの売り上げ上位のショップを見て感じた衝撃
 


土屋:ビジネスモデルを定めて、アクセルを踏み始めたのはいつ頃でしょうか?

正直、今まで話してきたことはあくまで私の中での仮説でした。「個人の時代」といったことは、過去10年、散々言われてきました。最終的に実現することはなかったですし、今回も同じ結果になるのではないか、と思っていたんです。

ただ、ある人に出会って仮説が確信に変わりました。

土屋:誰でしょうか?

佐藤:「STORES.jp」を開発、運営していた光本 (BANK代表取締役、hey 取締役)です。彼から STORES.jp のトップストアを教えてもらったとき衝撃を受けました。なぜなら、月間数千万円〜1億円を越えるような円売上をあげているストアの多くがは個人、ないしはスモールチームによって運営されていたからです。

それもフォロワーが何十万もいるようなインフルエンサーばかりではありません。フォロワーは数千前半のストアオーナーさんも多く、非常に熱量の高いコミュニティーで地に足のついたビジネスをしているんです。

土屋:フォロワー1000人なんかは、いまでは全く珍しくないですよね。

佐藤:いまの時代、不特定多数を狙うよりも、ニッチだけどコアなファン数百人をしっかり囲っているお店の方が売れる。自分のショップを持っているタレントさんもいますが、彼らは本業が忙しいあまり、ストアの運営、というかコミュニティーとの関わりにコミットできない。そのため、フォロワーが多かったとしても、エンゲージメントレートが低くなってしまう。さらにオーナーさんに話を聞いてみると、リアル店舗を持っている方もかなりいる。オンラインにもオフラインにも拠点があるわけです。

日本の EC化率は 5%程度。95%の取引はオフラインで行われています。さらに 8割以上の取引は電子化されておらず、取引にまつわる多くのデータは喪失しています。オフラインの取引を電子化すること、また一部の取引をオンラインで商圏を突破させることに大きな可能性があります。取引の電子化は、オフライン店舗の顧客とのつながりをより強固なものにするための重要なステップです。これによって、中小規模の店舗さんの逆襲が始まるのではないかと思います。

土屋:まさに「個のエンパワメント」の文脈ですね。

佐藤:そうですね。とはいえ、野心的な方でなければうまくいかないかもしれません。今日も歌舞伎町でアパレルショップを運営しているオーナーさんに会いましたが、お客様に何を提供できるかを真剣に考え、日々勉強している。そんな頑張っている人を応援したい。

まさにほぼ日がそうですが、彼らは人を「応援したい」という気持ちにさせてくれる。糸井さんは、とにかくチャーミングな人です。一生懸命だけど、どこか不恰好というか……。



僕らもそんな会社になりたいんです。だからこそ、「hey」という社名にしました。

文=野口直希 写真=小田駿一

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