ビジネス

2018.10.25 18:30

社会の流れから「次の広告」を考えた──佐藤裕介が語る、hey創業の舞台裏

グッドパッチの土屋尚史(左)、heyの佐藤裕介(右)

グッドパッチの土屋尚史(左)、heyの佐藤裕介(右)

経営陣が全員アロハシャツを着て並んでいる、コーポレートサイト。「Code for Fun」という文字が書かれたTシャツを着ているのが印象的なエンジニアサイト。

そして極めつけは、「hey」のロゴをあしらった数々のオリジナル商品。heyという会社を調べていると、経営層がクリエイティブの重要性を理解し、ビジネスとクリエイティブが上手く組み合わせている。そんな印象を受ける。



会社を率いているのは、元フリークアウト・ホールディングス代表取締役社長の佐藤裕介だ。2018年2月、ECサービス事業を展開する「STORES.jp」と決済プラットフォーム「Coiney」を運営する2社が経営統合。これに伴い、heyが誕生した。

オリジナルTシャツの販売など、ユニークな仕掛けを展開するheyの佐藤裕介は「ビジネスとクリエイティブ」について、どう考えているのか──グッドパッチの土屋尚史が話を伺った。

広告技術がカバーしきれないこと

土屋:今日はheyを立ち上げた経緯、そして佐藤さん自身の話を伺いたいと思っています。個人的な印象ですが、データ重視でロジカルな印象のフリークアウトに対して、heyは最初からデザインとかクリエイティブに力を入れている印象です。heyを立ち上げる際、どのようなことを考えていたのですか?

佐藤:もともと、わたしはフリークアウトで7年間、アドテクノロジー業界に身を置いていました。創業3年で東証マザーズに上場し、経営者として多くの学びを得る一方で、ずっと頭の片隅にこんな考えがありました。

ブランド、マーケティングメッセージ、メディア、オーディエンスを徹底的に分離して、マッチングの最適解を技術で求め続けた先に生まれる課題はなんだろうか、ということです。

水平分業と垂直統合を繰り返しながら前進していくのが世の常であるとするならば、アドテクによって分割管理されたものが、ワンパッケージに再統合され、分離以前よりも螺旋のワンフロア上に進化する、より高付加価値な統合になり得るのか。そのような変化を促す社会変化があるか。そのような問いに対するひとつの答えとして立ち上げたのが、heyです。



これから、プチ糸井重里さんが増えていくはず

土屋:では heyが考える、再統合された広告とは何でしょうか?

佐藤:広告、と呼べるものかわかりませんが、単純にいうと、ブランド、マーケティングメッセージ と、メディア、オーディエンスが一体になったものです。具体例では「ほぼ日」や「北欧、くらしの道具店」、「eimy istore」などですね。

「ほぼ日」の収益源泉は物販、特に手帳ですが自社メディア、商品にマーケティングが練り込まれており、一体化しています。つまり、自社メディアや商品そのものに、市場をつくり顧客を獲得する機能を埋め込んでいるのです。自社メディア(や店舗)、主力商品である手帳やオリジナルのハラマキ、タオルなどを通じ、新しいカルチャー、スタイルを提案、独自の顧客セグメントを生み出している、ということです。実際、ほぼ日にもお邪魔して、20 年前に広告業界から足を洗った糸井重里さんのモノの見方を学ばせてもらいました。

このような手法や考え方そのものは 10年以上前からありますが、糸井さんが「ほぼ日」でやってきたことが、ローコスト、小規模に立ち上げられる環境がうまれつつあります。自社メディアは、インスタグラムやツイッター、WIXなどに。

ECサイトは、STORES.jp や BASEなどのクラウドサービスを通じて安価に立ち上げることができます。個人がビジネスをするためのハードルも、クラウド会計や Google for Work(G Suite)などのサービスによってかなり下がりました。

このような環境下であれば、50億円の年商のあるほぼ日まではいかずとも、プチ糸井重里さんのような方がたくさんうまれるのではないかと考えました。事実、北米では TOP1000のEC事業者の成長率は、EC市場全体の平均を下回っており、中小事業者の成長率が加速していて市場成長を牽引しています。

このような経緯があり、2014年頃から個人が「ほぼ日」のようなものをどんどんをつくるとしたら、という考えが頭の中にありました。
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文=野口直希 写真=小田駿一

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