若手ビジネスパーソンに伝えたい、「下積み期間」が持つ本当の意味

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「下積み」という言葉が最も馴染むのが“職人”の世界だが、最近では老舗の和食店や寿司店でも、「育成の方法を見直していいのでは」という指摘も聞く。恵比寿にある有名ホテルのパティスリーでは、「商品の仕込みは午前中、午後は自分の技術を磨く時間」と、実践とトレーニングを分けることで若いパティシエの成長スピードを速めているそうだ。

会社員に置き換えると、1日のスケジュールの中で“練習”と“試合”をバランスよく組み合わせていくことが、生涯通じての成長を促進していく。 いわば「下積み期間」というのは一生続くものであって、「下積み○年の後に開花」と苦労を美談化するためのものでもないと思う。

「苦労話」を学びに変えるために

では、上司や先輩から「俺の下積み苦労話」を聞かされ、プレッシャーを感じたり、嫌な気持ちになった時にはどう対処すればいいのか。

こういう時には、「相手を変えることはできない」と認識した上で、こちらの受け止め方を変えるしかない。年長者のプライドを傷つけず、自分を振り返る良い機会と捉え、うまく質問でかわすのだ。

まず、「こんな話を聞きたくないなぁ」と感じる“嫌な気持ち”を客観的に見つめ、「同じ気持ちを後輩や他人にさせてしまっていることはないかな?」というセルフチェックの機会に変えること。負の感情は内省のきっかけになる。そう思えば、目の前でプレッシャーをかけてくる上司・先輩の見え方が変わってくる。「気づきのきっかけを与えてくれてありがとうございます」と感謝の念さえ生まれてくるかもしれない。

また、下積み苦労話が始まったら、折を見て「そこから一番学んだことは何ですか?」「もう一度そのときに戻ったらどうしますか?」といった質問をチャレンジして差し込んでみるのはどうだろう。意外に両者にとって新たな学びがあることは間違いない。

次に、「“下積み苦労話”をしない自分になるために、今からできることは何か?」と考えてみてほしい。多くの人は「過去は苦労、現在は楽な」状態だから、空虚感と共に聞いてない他人に語りたがる。練習と実践をバランスよく組み合わせて成長を続けていけば、下積みは“過去の苦労”ではなく“日常”になるはずだ。

働く期間が延びていく人生100年時代だからこそ、「生涯トレーニング」の習慣を。長く、無理なく、飽きずに成長を続けられる自分をつくるためにぜひおすすめしたいと思う。

連載:自分自身の育て方
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文=中竹竜二 構成=宮本恵理子

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