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国境は知っている! 〜ボーダーツーリストが見た北東アジアのリアル

上海普陀区にあるLIXILショールーム

中国・大連の海鮮レストランで、古い友人と会食をしていた8月上旬のこと、テーブルに置かれた彼のスマホが、何度もメッセージを受信していた。

そのたびに届く画像を見ながら、目を細めて微笑む彼に理由を訊くと、「娘が来年結婚するんです。いま家内と一緒にインテリア雑貨のショッピングモールにいて、新居の内装で気に入った家具やソファの写真を撮って、私に送ってくるのです」という。

彼は今春、30年以上勤めた旅行会社を退社し、悠々自適な年金生活を始めたばかり。ときおり会社から頼まれてツアー客を連れ、日本やアメリカに添乗員として出かけている。新郎の親が購入してくれたマンションの内装を手がけるのは、どうやら彼の娘と母親の担当らしい。

「写真を送られても、私がどうこう意見を言うことはありません。ふたりで決めたほうがいい。男親はお金を出すだけです」そう満足げに笑う彼の境遇は、大学卒業後、都市部に暮らし、定年まで勤め上げることのできた恵まれた階層、すなわち1980年代に中国が世界へと扉を開け始めた改革開放時代に青春期を送った人たちによく見られるものだ。彼らは、いま適齢期を迎えた「90后」(1990年代生まれ)の親の世代なのである。

OtoOの販売手法が一般化

以前、このコラムでもリポートしたとおり、今日の中国の人たちにとって、自宅の内装は人生最大の関心事だ。内装市場が32兆円に拡大し、世界のグローバルブランドも軒並み進出。ところが、彼らは業者に任せず、自分で内装を取り仕切ろうとする。業者や職人への不信があるからだ。経済成長にともない内装の好みも変わり、かつての見た目ゴージャスから、MUJIに象徴されるようなシンプルモダンな志向が若い世代に支持されている。

こうしたことから、日本の住宅建材、内装施工業界にとっても、中国には大きな商機があるのだが、現地の関係者は、果たしてこの状況をどう見ているのだろうか。

今年6月、上海にショールームをオープンした住宅設備建材大手LIXILの中国フルホームビジネスイニシアティブ ゼネラルマネージャーの村越一郎はこう話す。

「中国に来て9年になりますが、日中の市場環境の違いが、いかに大きいかを思い知らされています。日本の建築基準法は厳格で、モジュールが統一されていて、柱を立てる寸法や窓枠のサイズが決まっている。ドアやサッシの規格が共通しているから、メーカーは同じ寸法で高品質な商品を低コストで大量生産できる。販売チャネルも昔ながらの水道屋やガラス屋などをメーカーが網羅しています」


LIXILの村越一郎中国フルホームビジネスイニシアティブ ゼネラルマネージャー

要するに、日本の市場は、BtoBがメインだということだ。そのため、日本は閉鎖的で海外のメーカーからすると参入障壁が高いともいわれている。一方、中国の市場はというと、日本とはかなり異なる環境にあるという。

「中国では、マンション建築の仕様はヨーロッパのスタンダードを取り入れているものの、モジュールが統一されておらず、間口や壁の厚さもまちまち。規則も日本のように厳しくないうえ、中国の住環境は地域性の違いが大きい。日本のように大量生産しにくく、常に現場に合わせるものづくり、施工をしなければならない。日本のメーカーからするとお家芸を発揮にしにくい市場環境といえます」

文・写真=中村正人

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