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変化は日本マンガから国産マンガへの転換だけではない。マンガのスタイルも大きく変わっている。テンセント動漫の主力連載マンガを見ると、ほとんどがカラー。しかも日本型の見開きを前提とした構図ではなく、上から下に目線が流れていくスマートフォンによる閲覧を前提としたコマ割となっている。

「日本では白黒の頁漫(ページマンガ)が主流ですが、韓国ではカラーの条漫(ティオマン)(スマホ向けの縦書きマンガ)が主流です。韓国のマンガが人気になったこともあり、方式を変えつつあります」と、取材に応じた徐志薇(シュージーウェイ)・テンセント動漫版権運営シニアマネジャーは説明する。

王佑翔(ワンティエンシャン)・テンセント動漫有料運営担当者も「マンガはスマホで読むのが前提となっています。カラー条漫の普及では韓国が先行しており、日本から輸入したマンガもスマホ向けにコマ割を変えて配信しています」と、スマホに合わせた形態にシフトしたことを強調した。

新たな試みが続くのは、マンガ配信がまだ発展途上である証しでもある。特に課題となっているのが課金方式だ。一度は月額低額のサブスクリプションモデルを試みたが失敗。現在、試みているのが先読みモデルだ。新作が公開されてすぐに読むためには課金する必要があるが、数日間待てば無料で読むことができる。

王によると、読者の60%は無料になるまで待つというが、裏返せば40%は課金している計算だ。ヒットしてアニメ化、ゲーム化すれば大きな収入が見込めるものの、マンガ連載だけである程度の収入を確保するためにはどうするべきか。17年にはマンガ創作者への支払い額は1億4000万元(約22億8000万円)に達したが、これをいかに拡大するかが課題となる。

昨年12月、テンセント動漫はクリエイター大会を開催したが、そのテーマは「脱貧致富(貧乏から脱出しお金持ちになろう)」。いかにクリエイターに金が落ちるシステムを作るかをテーマとしたわけだ。テンセントが打ち出したのはクリエイターへの投資である。マンガ家が創業者となった制作会社に対し、戦略投資を実行する。制作会社の価値が上がればテンセントにもリターンがあるため、より深いパートナーシップを築いてビジネスに取り組むことができる。

昨年末時点でマンガ制作会社に対する投資額は累計1億元(約16億3000万円)を突破し、その後も積極的な投資を続けている。

クリエイターとプラットフォーマーの直接契約でいえば、日本ではアマゾン、ピクシブ、DMMなどが取り組んでいる。将来、テンセントがこの分野に進出する可能性はあるのだろうか。現時点で計画はないと関係者は否定するが、昨年には中国のネット文学を翻訳、配信する海外サービスをスタートさせただけに、可能性は否定できない。

日本人クリエイターの取り込みで先行するのがアニメだ。テンセントの投資を受けた制作スタジオ・上海絵界文化伝播有限公司は日本子会社を設立。日本人アニメーターを直接雇用するほか、日本のアニメ制作スタジオへの投資も行っている。

"エンターテインメント帝国"として盤石の地盤を築きつつあるテンセントは今年4月、「新文創」戦略を発表した。IPの価値を長期的に持続させることがテーマだ。一過性の人気作品を生み出すのではなく、「ディズニー」や「ドラえもん」のように、世代を超えて愛されるIPをいかに生み出すか─。新たな取り組みが始まっている。

文=高口康太 イラストレーション=アレクサンダー・ウェルズ/フォリオ

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