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ネット文学とマンガを統括するテンセントの事業グループ「インタラクティブ・エンターテインメント・グループ(IEG)」を広東省深セン市で取材した。

IEGが管轄するのは稼ぎ頭のゲームを筆頭に、アニメ、マンガ、ネット文学、映画などの娯楽産業だ。雑多な取り合わせにも思えるが、要するにIP(Intellectual Property、原義は知的財産だがエンターテインメント業界では原作版権を意味する)の開発とマルチメディア展開を担っていると考えれば理解できる。

IEGは12年に泛娯楽(パンユールー)戦略を発表、同一原作をアニメ、マンガ、ネット文学、ドラマ、映画、ゲームなどに水平展開する方針を打ち出した。特に歴史が古いネット文学には人気作品が多く、近年ではドラマや映画の原作として大量に活用されている。ドラマ「ランシエバン」など日本にも輸入された中国コンテンツの多くはネット文学が原作だ。

ネット文学(中国語で網絡文学)は、電子書籍(中国語で電子書)とは異なるものだ。電子書籍は紙の本を電子化したものを意味する。一方のネット文学とは投稿サイトで発表された小説だ。その意味では、日本の小説投稿サイト「小説家になろう」「カクヨム」と似ている点が多い。長期連載で読者の意見をくみ取りながらストーリーを続けていく手法しかり、人気ジャンルしかり。

日本では異世界転生モノが人気だが、中国では欧米系世界や中華系世界を舞台としたファンタジー、武侠小説要素、異世界転生、ゲーム世界での冒険などをごった煮にしたような「玄幻」というジャンルが人気だ。なお最近では現代モノも人気だというが、なんらかの特殊な力で職場や学校で“無双”するという内容が中心だとか。「玄幻」とは世界が異なっても、爽快感がカギという点では変わらないようだ。ほぼ毎日のように更新されていく小説を、隙間時間に携帯で読むというのが一般的なネット文学の読書だという。

日本と中国の違いは、その収益モデルにある。無料広告モデルで運営される日本と異なり、有料モデルを採用している点が大きく異なる。1000文字あたり1円以下という超低額で課金できるシステムが特徴的だ。さらに「打賞」と呼ばれる投げ銭システムも導入されている。これに加えて、紙での出版、ゲーム化、映像化などのIP開発が収入となる。

「大神」と呼ばれる有名作家ともなると、巨額の収入が得られる。華西都市報が今年4月に発表したネット作家収入ランキングによると、トップの唐家三少は17年に1億3000万元(約21億2000万円)もの版権収入を得たという。

そして、無数の企業がしのぎを削ったネット文学サイトで覇権を握ったのがテンセントだ。14年末に盛大文学を買収、翌年には自社サービスと合併させて「閲文集団」という子会社として独立させた。17年11月に香港証券取引所に上場、現在の時価総額は651億香港ドル(約9160億円)と評価されている(18年6月末時点)。

文=高口康太 イラストレーション=アレクサンダー・ウェルズ/フォリオ

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