ゴッホがショッピングモールに? 蘭美術館、米各地でレプリカ展

オランダのゴッホ美術館に展示されている、ゴッホの自画像(Photo by Jasper Juinen/Getty Images)

ビンセント・バン・ゴッホが拳銃で自らの腹部を撃ち自殺してから120年以上がたつが、その絵画の力はいまだに衰えない。米ニューヨークのメトロポリタン美術館は先日、所蔵するゴッホの絵画全16点を数年ぶりに展示した。またオランダ・アムステルダムのゴッホ美術館は、全米各地で同館が所蔵するゴッホ作品レプリカ版を展示するポップアップ展を開始した。会場はなんと、ショピングモールだ。

最初の展示は、ペンシルベニア州フィラデルフィア郊外にあるキング・オブ・プルシア・モール(King of Prussia Mall)を会場に今月14日まで開催された。

ゴッホ美術館は、なぜショッピングモールを会場に選んだのだろうか?

展示をプロデュースするリテール・イズ・ディテール(Retail is Detail)社のジョシュ・ブログ常任理事は「できる限り多くの人が、ゴッホや彼と同時代の芸術家の人生・作品に触れる機会を作ることは、ゴッホ美術館のミッションだ」と述べた。

「ポップアップ展を企画することで、普段美術館に行かない人やオランダに出向く機会がない人でも簡単にゴッホの作品を鑑賞できるようにした。ポップアップは、ゴッホ美術館がオランダで提供しているものの内覧会のようなもの。また展示では、本物に限りなく近いレプリカ版も購入することができ、日常生活でもゴッホの芸術を楽しめるようになる」

ゴッホの本物の絵画は、デリケートで非常に高価だ。美術館の外に運び出すことには危険が伴う。同館が、ゴッホ作品を世界中の人と共有する新たな方法を模索し始めたのもこれが理由だ。レプリカの制作では、本物を多次元スキャナーで読み取り、その起伏を正確に記録した。その後、3次元スキャンをプロ仕様の高解像2次元印刷と組み合わせ、本物に突き合わせて色のマッチングを行った。

高品質なインクと素材を用いることで、サイズや色、起伏は可能な限り正確に再現されている。ゴッホ美術館の専門家チームは、富士フィルム・ベルギーの専門家と協力し、全制作プロセスを細かい点まで監督した。

また、ポップアップ展ではレプリカを購入することもできる。同館は限定版コレクション「ゴッホ美術館版集(Van Gogh Museum Editions)」の制作を委託した。このコレクションは、ゴッホ美術館が所蔵するゴッホの傑作の3次元レプリカ版で、番号を付与され認証を受けている。レプリカの作成には「レリーフォグラフィー」と呼ばれる新たなプロセスが活用された。同館によると、レリーフォグラフィーは「最先端の画像撮影、スキャン、印刷の技術と、優れた修復専門家による綿密な手作業との組み合わせ」によって実現される。
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編集=遠藤宗生

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