元NSA長官、イスラエル軍出身者と連携で中国のスパイ活動に対抗

マイク・ロジャーズ(Photo By Tom Williams / CQ Roll Call by Getty Images)

米国家安全保障局(NSA)の長官を退任したマイク・ロジャーズは、在任中に度重なる機密情報のリークへの対応を求められ、常に辞任のプレッシャーに晒されてきた。

2016年には、国防総省や諜報機関の長官が当時のオバマ大統領にロジャーズの解任を迫ったが、在任期間はトランプ政権まで及んだ。彼は今年初めに退任の意向を表明し、5月に辞任した。

ロジャーズは、フォーブスとのインタビューで米国の未来について強い懸念を示し、特にデジタル領域で多くの脅威に直面していると述べた。彼は、中間選挙を数週間後に控え、「ロシア以外にも、中国が米国の民主主義を混乱に陥れようとしている」と指摘した。

ロジャーズによると、中国は、米国内の組織に潜入して情報を収集し、選挙結果が中国に与える影響を分析しているという。

「選挙への介入を試みているのはロシアだけでなく、中国も活動を行っている。しかし、両者の意図は少し異なる。ロシアの目的は、米国の民主主義を弱体化させることだが、中国は、選挙結果が中国にどのような影響を与えるかを見極めようとしている。目的は異なるが、両者とも非常にアグレッシブに活動を行っている」とロジャーズは述べた。

中国によるスパイ活動

ロジャーズとのインタビューに先立ち、ペンス副大統領も中国が中間選挙への介入に前例のない力を注いでいると批判した。ペンスは証拠を示さなかったものの、「中国政府は、諜報員や偽装団体、プロパガンダ広告を結集し、中国の政策に対する米国民の考え方を変えようとしている」と述べ、中国に比べればロシアの活動が色あせて見えると指摘した。

同じ週に、ブルームバーグは中国がアマゾンやアップルなどの米企業のサーバーにスパイチップを仕込んでいたと報じた。しかし、2社ともその事実を強く否定しており、アップルはブルームバーグの報道に異議を唱える書簡を議会に提出した。

ロジャーズもフォーブスに対し、「報道内容の全てに賛成するわけではない」と述べている。また、イスラエル国防軍の諜報部隊、「8200部隊」の前責任者であるNadav Zafrirも、ブルームバーグの報道内容について個人的に認識していないと述べている。

しかし、だからといって中国による介入を懸念しなくてよいわけではない。「人々は、ブルームバーグが報じたような、個々の事例に気を取られるべきではない」とロジャーズは述べ、重要なのはサプライチェーンにおけるセキュリティと信頼性を担保することだと指摘した。

イスラエル8200部隊出身者と連携

ロジャーズは、2014年にNSAと米サイバー軍の責任者に就任して以来、サイバー攻撃への対応に関わってきた。NSAの長官を退任した現在も、その経験を活かして民間企業でアドバイザーを務めている。

10月18日には、ロジャーズが、Zafrirが率いるシンクタンク「Team8」のシニアアドバイザーに就任したことが発表された。Zafrirは、8200部隊がマルウェア「Stuxnet」を使ってイランの核施設を攻撃したときの責任者だ。

この攻撃は、イスラエルと米国諜報機関が共同で行ったとされる。Team8の任務は、攻撃者が誰かを突き止め、それを止めさせることだ。Team8の傘下の「Claroty」は、インフラ向け防御システムを提供し、もう1社の傘下企業「Illusive Networks」は、ハッカーを騙すための罠をしかけている。

Zafrirは、ロジャーズの知見を活かし、西側への攻撃に対してより多くの防御策を開発しようとしている。

編集=上田裕資

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