研究の著者らによると、人は1日の間にマインドフルな状態への出入りを繰り返すことが多い。そのため研究では、意図的にマインドフルな動きをすることで自分の状態に対する認識を高め、マインドフルな状態により楽に移行できるかもしれないことが、示唆されている。
研究チームは、動きながらマインドフルネスを実践することが健康につながるかどうかを見極めるため、ペンシルベニア州立大学の学生160人にパコ(Paco)と呼ばれるモバイルアプリを使用させた。同アプリは1日に8回ユーザーにメッセージを送り、現在何をしているか、現在の活動にどれほど集中している(マインドフルな状態にある)か、ストレスレベルや気分はどうかを尋ねた。
その結果チームは、被験者が動いているとき、あるいはよりマインドフルな状態を経験しているときに良い気分になりがちであることを発見した。また、被験者が動いていて、かつマインドフルな状態にあるときは、感情や気分、ストレスレベルがさらに改善していた。被験者が最も幸せを感じていなかったのは、座っていたときであることは言うまでもない。
研究の著者の一人で、現在は南カリフォルニア大学の博士課程修了後研究者であるチーシアン・ヤンは「人が通常よりマインドフルで能動的な状態にあるとき、マイナス感情は一段と緩和されるようだ」と述べている。「活発になることには既に、否定的な感情の改善効果があるが、それに加えて通常よりもマインドフルになれば、その効果が増幅される」
ただし、同研究が分析したのは相関関係だけなので、マインドフルな動きが実際に心の健康に変化を引き起こしているのかどうかは特定できない。ヤンらは、この課題に取り組むためさらに実験を続け、その結果を老化と身体活動のジャーナル(Journal of Aging and Physical Activity)で発表。実験では、平均年齢73歳という年配の被験者に、野外で行うマインドフルなウォーキング活動に参加してもらった。被験者は活動中、呼吸や足取り、感情や体の感覚に注意を払うよう指示された。この活動後、被験者の憂鬱(ゆううつ)な気分や不安、マインドフルネスレベルは全て改善した。