ビジネス

2018.10.27

「SDGs x 仏教」の秘めたる可能性 日本はイニシアチブをとれる

世界の仏教徒が集まり11月10日に行われる「全日本仏教青年会全国大会」の巨大看板は、日本文化の象徴としてアニメを採用している。


──今現在、お寺が行っている社会福祉の取り組みもあるのでしょうか。

今行われている社会福祉活動の代表的なものとしては「おてらおやつクラブ」という、お寺にお供えされるお菓子などを、恵まれない子供たちへおすそわけするという活動があります。これは、慈悲の実践活動を通じて、貧困問題の解決を目指すというものです。

日本国内では子供の7人に1人が貧困状態にあるという調査結果もある中、お寺が直接子供たちに手を差し伸べているという点で、非常に注目を集めているプロジェクトです。


おてらおやつクラブ(https://otera-oyatsu.club)の活動で、月間のべ約9000人の子供たちがおやつを受け取っている。

──日本は仏教が身近な国ですが、SDGsに取り組むにあたって、仏教との親和性はどのように活きてくるでしょうか。

日本では、例えば食事の場面で“いただきます”と手を合わせたり、“もったいないから残さず食べましょう”と教えられたり、日常の生活に仏教の教えが根付いていますよね。つまり、SDGsの目指す「施しあう、支え合う」という未来、その本質を理解しやすい環境にあります。グローバル化が進む中、人類の普遍的な「和」の世界の実現に向けて、日本人がイニシアチブをとる可能性は十分にあるでしょう。

一方で、仏教の伝統的な価値観と皆さんの新しい価値観が融合していかないと、未来は作れません。スティーブ・ジョブズも、稲盛和夫さんも松下幸之助さんも、時代を作ってきた人たちは、仏教との融合で世界を変えてきました。ですから、仏教と手を取り合い、一緒に持続可能な社会を作っていきましょうとお伝えしたいですね。

皆さんの考え方や課題というのを、お寺に持ち寄ってもらって、そこでお互いに道を求めていく。社会の課題に対して一緒に取り組んでいくことができれば、「施しあう、支え合う」という精神性が増幅し、社会にしっかりと根付いていくでしょう。

一つひとつは小さなことかもしれませんが、その小さな想いが積み重なり、世界平和へと繋がっていくのではないかと考えています。


倉島隆行(くらしまりゅうぎょう)◎1977年生まれ、愛知学院大学文学部宗教学科 卒業。三重県曹洞宗塔世山四天王寺住職。全国曹洞宗青年会会長。2017年に全日本仏教青年会の第21代理事長に就任。伊勢国際宗教フォーラム世話人としてダライ・ラマ14世をお招きするなど、宗教の垣根を超えて活躍している。

連載:クリエイティブなライフスタイルの「種」
過去記事はこちら>>

文=国府田淳 撮影=佐藤祥子

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事