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グループを牽引するメンバーたちは、それぞれ異なるスキルを持ち、お互いを補完しながら組織を強くしている。そのなかで、なぜダニエル・チャンを後継者に選んだのか。それは、チャンには自分にはないスキル、「システマティック・シンキング」があったからだという。

「起業家は気性が荒く、怒りをコントロールできないことがある。でも(アリババグループにとって)いまはシステマチックでロジカルな考え方が必要だ。巨大企業には彼のような責任感の強いリーダーが求められる。このような観点から、彼が適切な後継者だった」


アリババグループのダニエル・チャンCEO(Getty Images)

グループのCEOとして、いまもホテル暮らしを強いられているというチャンだが、会長職に就けばさらに自宅に帰る時間は少なくなってしまう。逡巡するチャンを、マーは時間をかけて説得した。「彼が同意してくれたとき、とても感動した」と話す。

チャンには他にも不安があったようだ。そこで、「もし自分が良い成果を上げられなかったら、あなたは戻ってくるか」とマーに尋ねた。マーは「自分は会長職には戻らない。とはいえ、完全に去るわけではない。引退は、アリババグループを去るということではない。共同創業者として対応するし、会長やCEOではないが、株主であり、組織には永遠に関わっていく」と答えたという。

「創業者というのは親みたいなものだ。子供が大学まで行ったら、もうあまり直接的に助けることはできない。現実世界に向き合わせ、チャレンジさせることくらいしかできない。何かあればいつでも喜んでアドバイスするが、決断をするのは私ではない」

そして、自らも実際に携わってきた教育の素晴らしさを、最後にこう表現した。

「教えることは、自らの人生をも振り返ることになる。これまでオバマ元大統領やビル・ゲイツ、ウォーレン・バフェットなど、世界のさまざまな人物に出会えたし、それが私の栄養となっている。私は教師として、彼らの歴史的意義を考え、それを後世に伝えることができる。しかし、偉人たちから学ぶことも重要だが、もっと大事なのはそこから自分自身を知ることなのだ。自分であるということ、誰かを真似するのではなく自分らしくいること、それが大事なことなのだ」

そこには、54歳で引退を決めた世界的アントレプレナーの人生哲学が滲み出ていた。

文=成相通子

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