経済・社会

2018.10.23 07:00

「どうせやらないでしょ?」が悔しくて 商店街の空き店舗撲滅へ

岡崎市役所の晝田浩一郎

愛知県・岡崎市役所の晝田浩一郎(ひるた こういちろう)は、地元商店街の活性化に貢献し、2017年、「Forbes JAPAN 日本を元気にする88人」に選出され、「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード」も受賞した。

2016年1月、当時、経済振興部に所属していた晝田は、有志団体「岡崎市空き店舗撲滅運動 ここdeやるZone(以下、ここやる)」を立ち上げ、いまも代表を務める。「ここやる」は商店街の一角の空きスペースを借り上げ、誰でも気軽にイベントを開催できる環境を生み出した。毎月の賃料は「ここやる」が拠出するが、興味深いことに晝田は、「漢気(おとこぎ)でお願いします!」と役所の先輩たちを口説いてカンパを募り、その賃料を賄う。

商店街スペースの利用希望者は、その利用時間に応じて、気軽にイベントを開催することができる。その結果、約2年8カ月の間に500回を越える驚異的な数のイベントが開催され、参加者数は5000人を超えた。

約半分のイベントは、晝田ら市職員が主催するが、残りの半分は市民によるものだ。参加者は県外からもやってきて、20歳前後から80歳を超えるおじいちゃんやおばあちゃんまでと幅広い。

また、イベント内容も多岐にわたる。「Startup Weekend」という、シアトル発の起業家輩出イベントの体験版や、認知症を抱える家族を支援するサロンなども開催され、地域のさまざまな人々が交流する場が生まれている。

とりわけ人気が高いのは、街の人の話を聞く会だ。商店主のおじいちゃんをゲストとして招き、昔にぎわいがあった商店街の話を、当時の情景を交えて話してもらう。登壇をお願いすると、「しゃべることなんて5分もないよ」と言われるが、いざ話し始めると、若い人と交流できるのが楽しいのか、2時間ぶっ続けで話す人もいるという。

「どうせやらないんでしょ?」に発奮

そもそも、晝田がこの試みを始めたきっかけは、彼と同じく「Forbes JAPAN 日本を元気にする88人」に選出された長野県塩尻市のスーパー公務員、山田崇が取り組む商店街の空きスペースの活用事例を視察したことからだ。2015年の夏、友人に誘われて塩尻まで出かけ、山田と夜中の2時、3時まで飲み続けた。

晝田は、そこで、さまざまな人々が交流する心地よい空間に身を任せていたが、突然、山田は鋭くこう言い放ったという。「いろんな人たちが視察に来てくれるけど、結局、誰もやらないんだよね。どうせ晝田たちもやんないんでしょ?」

そのひと言で、一気に酔いから醒めた。そして、「あんなことを言わしとくわけにはいかん、絶対にやる!」とその場で誓った。山田から図星をさされて悔しいと思ったのは事実だった。その悔しさと「見返してやる!」という怒りにも近いエネルギーに突き動かされたからこそ、「ここやる」は、なおの広がりを見せ、今も続けられている。
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文=加藤年紀

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