Birdは設立からわずか1年の企業だが、米国全土にサービスを広げ、評価額は20億ドル(約2200億円)とされている。登録ユーザー数は210万人に達し、これまでの総移動距離は1000万マイル(約1600万キロ)以上となっている。
パリにおいても、Birdは一日乗り放題型のサービスを展開し、総移動距離は25万マイルを突破した。しかし、同社はイギリスのロンドンで当局の規制に直面している。
Birdの売りはラストワンマイルの移動の困難を解決することであり、同社のロンドンの広報担当は、平均移動距離が1.4マイルだと述べている。同社は米国の50都市以上でサービスを展開し、欧州では4都市に進出した。競合の「Lime」はこれを上回るペースで欧州での拠点を広げ、ベルリンやチューリッヒ、マドリードを含む11都市で展開中だ。
しかし、両社とも英国のロンドンにおいては正式なサービス開始のアナウンスを行っていない。LimeとBirdの2社は現地チームを投入してはいるが、当局の許可が得られていない。
2社はロンドン交通局(TfL)に営業免許の申請を行ったが、そもそも電動スクーターを対象とした規則が存在しないとの理由で却下となった。1835年に制定された、時代遅れの英国運輸省(DfT)のルールには、「馬車」の歩道での走行を禁ずるという規定がある。
また、英国の運転免許庁(DVLA)はどのような車両に走行許可が与えられるかを厳格に定めている。セグウェイやホヴァーボード、さらに電動キックスクーターなどは、英国の法律では正式には認められていない。
ロンドン交通局でディレクターを務めるMichael Hurwitzは次のように説明していた。「法律の規定が存在しない以上、我々は本件に関し意見を述べる立場にない。しかし、事態の動向には注視していきたい」
しかし、解決策が全くないわけではない。英国運輸省は今年9月、「モビリティの未来」と題した検討会を開催し、交通に関する新たな法規制の在り方を議論した。
LimeとBirdの2社は今後の法改正に向けて活発なロビー活動を行っている。それでも、ここで課題となるのは、EU離脱を控えたイギリス政府が、これよりも差し迫った重要な課題を、数多く抱えていることだ。
EU諸国が電動スクーターなどの新たなトレンドを受け入れるなかで、イギリスだけが1835年に制定された法律に縛られる状況が、今後も続くのかもしれない。