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I write about the future of books and the business of storytelling.

ymgerman / Shutterstock.com

電子書籍のサブスクリプションサービスを提供する米国の「Scribd」がニューヨーク・タイムズ(NYT)と提携し、月額12.99ドルの読み放題サービスを開始する。

世界最大級の電子書籍の定額読み放題サービスとして知られるScribdは、100万件を超える書籍やオーディオブック、雑誌や新聞などのコンテンツを揃えており、ここにNYTが毎日発信する記事が加わることになる。

Scribdは2007年に創業。共同創業者のTrip AdlerとJared Friedmanらが、YコンビネータやCharles River Ventures、Redpoint Ventures、Khosla Venturesらの支援を受け、当初はウェブベースのサービスとしてスタートした。

同社CEOのAdlerは「NYTとの提携により、人々のコンテンツ消費の新たなトレンドを示せる」と述べた。Scribdは昨年、学生限定でNYTのサブスクリプションサービスを始動させていた。

「サブスクリプションはパブリッシャーたちに新たな収益機会をもたらすと同時に、消費者に快適なコンテンツの消費環境を与える」とAdlerは言う。

米国のメディアは2016年の大統領選挙以降、デジタルのサブスクリプション収入を伸ばしており、NYTだけでなくThe AtlanticやHarper’s Magazineなどの大手は増収となっている。一方で、米国の新聞(紙)の売上は2005年時点で474億ドルだったのが、2014年には164億ドルまで下落した。

また、広告が大半を占める新聞のデジタル版の売上は2005年に20億ドルだったが、2014年に至っても35億ドルという規模だった。

サブスクリプションの普及によってパブリッシャーらが受け取る金額は、全体的には少なくなるという見方もあり、独自の読み放題サービスの立ち上げを模索する事業者もいる。一方で、消費者の間では、広告ベースのプラットフォームではアクセスできない、プレミアムコンテンツへの需要も高まっている。

今回のScribdとNYTのサブスクリプション事業での提携は、コンテンツ業界全体に漂う懸念を払拭するほどの巨大なインパクトは持たないのかもしれない。しかし、2社はともに、過去数年でサブスクリプション事業を成長させている。

月額8.99ドルのScribdの会員数は2018年に75万人を突破し、前年から50%の増加となっていた。一方で、NYTの2017年の紙及びデジタル版の購読者は300万人以上に増えた。

苦境に陥ったコンテンツ業界がサブスクリプションに望みを託すなかで、ScribdとNYTの取り組みが、時流に沿ったものであることだけは確かだ。

編集=上田裕資

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