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2018.10.22 07:00

「新しい現実」を見よ|ネスレ高岡浩三


新しいマーケティング手法を次々に生み出してきた高岡だが、新しい現実や問題に気づいても、解決策を導くのは容易ではないだろう。秘訣を尋ねると「一生懸命考えるだけ」とシンプルな答えが返ってきた。

「ネスレ日本で史上最年少部長になったとき、スイス本社から『なぜ日本は採用が年1回、新卒だけなのか』と聞かれました。そういうものだと思っているかぎり、考える力は身につかない。こちらの常識を知らない外国人とのディスカッションを通して、ずいぶん鍛えられました」

日本は高齢化という新しい現実を迎えている。そこでいま力を入れているのが、「ネスレ ウェルネス アンバサダー」だ。世には健康食品やサプリがあふれており、消費者は自分に何が適しているのかわからない。その問題を解決するため、毎日の食事内容や遺伝子検査から必要な栄養素をジャッジ。その栄養素が含まれる専用カプセルを提供する。

高岡の父と祖父は42歳で亡くなった。自分も42歳で死ぬという強迫観念から人生の前半戦を全速力で駆け抜けた。42歳を過ぎ「1年でも長く健康で生きていたい」という思いが強くなったことも、ウェルネス アンバサダー考案の背景にある。

現在、58歳。当初設定した人生のゴールはとうに過ぎている。

「5年、10年刻みで、やりたいことのゴールを設定しています。これから何をやるか? まだ言えません」

そう笑う高岡。人生の後半戦に突入してもスピードを緩めるつもりは毛頭ないようだ。


たかおか・こうぞう◎1960年生まれ。83年神戸大学経営学部卒業後、ネスレ日本入社。ブランドマネジャー等を経験後、2001年ネスレコンフェクショナリーのマーケティング本部長に就任。同社社長、ネスレ日本副社長飲料事業本部長を経て、10年から現職。58歳。

text by Kei Murakami photograph by Taro Karibe

この記事は 「Forbes JAPAN 世界を変える「30歳未満30人の日本人」」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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