一方で、参加企業を見ていくと、海外のプログラムを積極的に探していた様子がうかがえる。
例えば南アフリカから参加する「doot!」。訪日観光客向けに日本各地の伝統的な食や文化を体験するサービスを立ち上げようとしている彼らの狙いは明確で、「日本のインバウンドは、世界的に見ても成長市場。日本人が、英語が苦手なのもむしろビジネスチャンスだ。立ち上げ期の支援プログラムとして、シリコンバレーのYコンビネーターやTechstarsを含め、世界中のアクセラレータを比較し、500 KOBEが最適と判断した」と話す。
また、民間企業から神戸市に“ITイノベーション専門官”として登用され、500 KOBEを3年間担当する吉永隆之は、「シンガポールやマレーシアなどは、自国のマーケットが小さいのではじめから国外を市場と捉える企業が多い。自国でのサービス展開にこだわらない500 Startupsと相性が良いのではないか」と語る。
今回限りの単純な現象ではない
このように、日本市場をめざして、海外から参加するスタートアップは増えているのだが、翻って、3分の2ほどに参加が減った国内の起業家たちは、いま、どんな状況にあるのだろうか。
ご存知のように、日本ではウーバーやエアビーアンドビーの展開が難しいように、独特の規制や慣習が多い。国内の起業家であっても、その足枷のなかでのビジネス展開にならざるを得ない。また、良くも悪くも国内でそれなりの大きさの市場があるため、海外志向は弱くなる。さらに言語の壁も、それを加速させる。
日本は、起業家がビジネスを構想する段階で、国外に照準を合わせにくい環境下にあると言わざるを得ない。今回の500 KOBEの応募者のように、日本市場を狙って海外から参入する起業家たちとはかなり温度差があるように感じる。
そういう意味で言えば、今回の500 KOBEの「逆転現象」は、このプログラムに限った単純な現象ではなく、日本のスタートアップの課題と海外の勢いを如実に示し、業界に警鐘を鳴らすモノではないだろうか。
連載:地方発イノベーションの秘訣
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