K・ウェスト、大混乱のホワイトハウス訪問 心の病めぐる議論に

(左)カニエ・ウェスト(右)トランプ大統領(Photo by Oliver Contreras - Pool / Getty Images)


スティグマ

心の病に負の烙印(スティグマ)を押す行為が実際の問題として存在するのは事実だ。精神病の診断を受ければ、雇用の機会や住居、医療、交際関係にさえダメージが出る。スティグマがあることで、精神のケアを受けるのを避ける人も出てくる。

レモンをはじめとするCNNのコメンテーターたちは、ウェストにスティグマを与えたのだろうか? レモンらは確かに、もっと慎重に発言できただろう。その一方でレモンらは、ウェストの非理性的で秩序を欠いた行動を理由として挙げた。それ自体は正当な点で、スティグマを与えるものとは言えない。とはいえ、ウェストが入院したという事実は関係ないものなので、言及すべきではなかった。

ジャーナリストは著名人への言及時を含め、心の病について話す時には常に注意を払わなければならない。しかし、それと同様に重要なのは、スティグマの概念を党派心に駆られた議論での武器として使わないことだ。そうすることにより、スティグマの概念自体が矮小化されてしまう。

心の病と診断されたり、それが理由で入院したことで、何かに不適格となったり、意見の正当性が失われたりするのか?

それは決してない。問題はウェストが入院し、セトマイヤーがそのことに言及するというミスを犯したことではなく、ウェストが理性的に一貫性を持った言動をしていたかどうかだ。理路整然と考えることができなければ、誰かの代弁者や支持者として役に立たないという論理は、至極まともなものだ。

精神病の診断を受けただけで、何らかの資格を失うことにはならない。リンカーンやチャーチルは、いずれも深刻な情緒障害に悩まされていたとされるが、それでも素晴らしいリーダーだった。しかし、ウェストのように明らかに混乱して整然さに欠けている場合、支援を求めるべきだ。またその場合、その人物の発言や行動の正当性が疑問視されるのは妥当なことだ。

心の病と診断されることと、実際の症状が発現していることの重要な違い

多くの精神障害では、正常な状態が続く時期の合間に病気の症状が散発する。うまくいけば、治療により症状は寛解する。つまり、例えばそううつ病の診断を下されたとしても、うつやそうの症状は一時的にしか発現しない場合もあるのだ。病を制御することができれば、病気が明白に現れる期間は全くないかもしれないが、それでもそううつ病が治ったということにはならない。

この事実を受け入れた上で、すべきことは2つある。1つ目は、再発の可能性を最小化するべく自己ケアを行うこと。2つ目は、症状が出そうな兆候、既に症状が出ていることを示す警告のサインを知ることだ。そのサインが出たら、支援を求め、治療計画を調整する。そして、テレビに出演したり、大きな決断やスピーチをしたりするのは控えることだ。

編集=遠藤宗生

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