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2018.10.17

アパレル生産拠点の米国回帰、対中制裁関税で加速か

humphery / by Shutterstock.com

ブランドロイヤリティを持たなくなった消費者がますます移り気になっていることや、新興ブランドが大手各社を脅かすようになっていることなど、ファッション業界はさまざまな課題に直面している。

変化に対応しようと業界各社が検討していることの一つが、生産拠点をアジアから欧米に戻すこと、あるいはより近隣の国に移すこと(ニアショアリング)だ。

コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーと業界誌「ソーシング・ジャーナル(Sourcing Journal)」が行った調査によると、世界のアパレル関連企業およそ200社(大半は欧米の企業)の調達担当部門の幹部のうち、商品供給のサイクルを短縮するため、2025年までにニアショアリングに切り替える可能性が「やや」または「非常に」高いと答えた人は、およそ8割に上る。

また、オンショアとオフショアの割合に関する決定が貿易協定に影響を受ける可能性についても、「やや」または「非常に」高いと回答した企業が約8割となった。調査結果に基づく報告書を作成したマッキンゼーのパートナーは、中国から米国への輸入品に課された制裁関税は、「近隣国へのアウトソーシングに変更するニアショアリングへの切り替えを後押しする」との見方を示している。

ニアショアリングへの移行に向けた動きは、ドナルド・トランプ米大統領が中国からの輸入品に制裁関税を課すより前から見られていた。消費者の好みがかつてないスピードで変化し、短期間での商品の入れ替えに対するニーズが増加するなか、デザインから発売までの期間を短縮することの重要度は、一層高まっている。

回転が早いとされてきたファッションのサイクルは、これまで6カ月程度だった。だが、関連各社は現在、業績を上げるためにはこれを6週間未満に縮める必要に迫られている。需要がある市場にタイミングよく新商品を提供できることは、過剰在庫の発生を避けることにもつながるという点で重要だ。

売れ残った商品は、利益をむしばむクリアランスセールの実施につながる。また、持続可能性の面でも重大な問題となる。廃棄物やカーボンフットプリントの削減を重視する消費者が増えているためだ。
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編集=木内涼子

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