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2018.10.22

イノベーションを生み出す「越境リーダー」の共通点

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企業の成長にはイノベーションが不可欠です。そのイノベーションを生み出す人材として、既存の仕組みや組織の境界を越えて、まったく新たな視点のビジネスを展開させる「越境リーダー」が今、注目を集めています。

新事業の立ち上げと口で言うのは簡単ですが、そこには当然さまざまな困難が伴います。いわば何もない0の状態から、実現化に向けて最初のステップを踏み出すために、越境リーダーはどんな思考プロセスをとっているのでしょう。

2012年に「越境リーダーシップ」プロジェクトを立ち上げ、産学連携で越境リーダーに関する調査研究や越境リーダーを支援するコミュニティ運営、価値創造のリーダーシップ開発をしているウィルソン・ラーニング ワールドワイド イノベーションセンターの三浦英雄さんにお話を伺いました。


越境リーダーシッププロジェクトで話をする三浦英雄さん

一般的に“リーダーシップ”とは、組織内の立場や役割によって必要とされるものですが、三浦さんは「個人の想いを行動に移すことがリーダーシップ」と定義しているそうです。そこに至った理由は、仕事とプライベートの両方で、三浦さん自身が「自分は何を大事にしたいのか?」と考える出来事があったからでした。

目の前にある選択肢では幸せになれない

三浦さんは大学卒業後、グローバルに研修事業を展開するウィルソン・ラーニング ワールドワイドに入社。営業としてキャリアを築いてきました。ただ、誰かが作ったものを販売するだけではなく、自分の情熱を注げる社会に価値のある事業を創りたいという思いが強く、社内で3回、新規事業の発足を企画しています。

1回目は、入社1年目のとき。与えられた業務も十分にできていない状態だったため、新サービスの立ち上げは困難を極めて断念。2回目は入社8年目で、社長から許可をもらったにもかかわらず、社内から反対意見が出てプロジェクトを中止せざるをえませんでした。すでに外部を巻き込んでいたので、謝罪してまわる最中には、新事業を興すのは「この会社じゃダメだ!」と絶望して、転職活動も始めたそうです。

しかし、自分がやりたいのは会社を変えることではなく、自分で何かを成し遂げることだと気がついた三浦さんは、転職活動を取りやめ、たとえ社内で反対されても負けないようなものを実現すると決心しました。

ちょうどそのころ、2人目の子どもが誕生。三浦さんはプライベートで日本最大のスウィングジャズイベントを主催していたのですが、子育てが大変な時期にイベントに出かけようとしたとき、パートナーから「あなた、この状態で本気で行くの?」と問われます。

「大好きな音楽か。愛する家族か。こうやって好きなことを諦めて、大人になっていくのか?」

悶々とした気持ちで悩んで、三浦さんははたと気づいたのです。音楽も家族も等しく愛しているのに「なぜ、どちらか1つ選ばなくてはいけないのか? 目の前にある選択肢のいずれを選んでも幸せにはなれない。ならば、両方とも取れる選択肢を自分で創りだせばいい」と。
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文=秋山ゆかり

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