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2018.10.22

イノベーションを生み出す「越境リーダー」の共通点

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そうして考案されたのが、子連れで行ける大人のための音楽イベントです。

まずは、自分が好きなことで繋がる子育てコミュニティを地域に築こうと動き始めました。そして、0歳から6歳の子どもを連れて大人が楽しめる音楽イベントにするために、対象セグメントを徹底的に調査。試行錯誤しながら改善を重ね、6年間毎回満員となるイベントへと育てていきました。

参加者から自分たちもこういうイベントを開催したいと言われ、ノウハウを提供し、その結果、あちこちで同様のイベントが開催されるようになりました。三浦さんはもともと、自分の想いに忠実でありたいがために始めたけれども、同じようなニーズを持っている人がたくさんいたことを知ったのでした。


子連れ音楽イベント(写真提供:三浦英雄さん)

価値観を大きく変えた出会い

もうひとつ、2009年に日本元気塾の一期生としてバングラデシュに行ったことも、三浦さんを変えた大きな転機となりました。

同室になったのは、当時「雪国まいたけ」で働いていた佐竹右行さん。佐竹さんは、「付加価値が高い作物を栽培すれば、雇用が生まれ現金収入にもなる」とノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス博士に共同もやし事業を直接交渉。それが、グラミン・ユキグニマイタケ(現グラミンユーグレナ)という事業に発展したのです。

世界最貧国といわれるバングラデシュで、自分の想いと会社の理念をかけあわせ、「絶望の中で希望を作る」という皆が喜ぶ事業創生を間近に見て、「個人の想いを起点に企業やNPO、地域が連携して社会課題を解決することが、新しい価値の創造につながる」と三浦さんは強く感じたのでした。

こうして、既存の枠組みや組織の境界を越えて価値創造をしていく越境リーダーたちに出会い、三浦さんは、越境リーダーについての研究や推進支援に取り組むプロジェクトを立ち上げようと動きました。これが三浦さんの3回目の新規事業への取り組みです。

「音楽イベントのようにプライベートでやれば簡単だしリスクは少ないけれども、個人で越境リーダーについて発信しても社会にインパクトは与えられない」と思った三浦さんは、産学連携の委員会形式を思いつきます。一橋大学や慶應義塾大学と協業してカンファレンスを開催し、プロジェクトを進めていく中で、「これをマジでやっていく!」と自分の中で覚悟が育っていきました。

わずかながらも収益をあげ、研究成果を社長に報告すると、最初は伏せていた会社名を出して正式に推進していく許可がおりました。
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文=秋山ゆかり

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