制裁関税は企業の投入コストを上昇させる。さらに、米国では賃金が上昇している。この“ワンツーパンチ”が企業の利益率を圧迫している。資産運用大手インベスコのチーフ・グローバル・ストラテジスト、クリスティーナ・フーパーはこれに関して、ロイター通信に対して次のように語っている。
「制裁関税の対象が拡大されれば、それはより大きな問題になる。関税は輸入コストだ。そして、賃金コストでもある。現時点ではまだ雇用統計にこのコストは反映されていないが、・・・賃金コストの上昇を実感している業界はあるに違いない」
市場が有効に機能しているとすれば、つまり株価が新たな情報に迅速に反応しているとすれば、このところの大幅な値下がりは利上げによるものではない。成長を阻害する関税の影響が原因だ。
コストが増加し、世界的な競争が依然として激しい中で、企業が利益率を維持するために商品を値上げすれば、売上高の維持は困難になるだろう。企業は価格を据え置き、コストを削減しなくてはならない。
110億ドル規模のリストラ計画を進めているフォード・モーターは先ごろ、正社員およそ7万人を人員削減の対象とする方針を明らかにした。従業員の一時解雇(レイオフ)が避けられない企業は、ほかにも多数あるだろう。職を失う人が増えれば、消費支出は減少する。それは、売上高の伸び悩みとレイオフの増加という悪循環につながり得る。
トランプが全ての制裁関税を解除すれば、問題はすぐに解決されるだろう。だが、それは起こりそうにない。投資家は当面、株価の乱高下に備えなくておかなくてはならない。