LGBTからダイバーシティを考える


杉山:メディアなどによってつくられたLGBT像は確かにありますよね。僕も昔、自分が女性として生きていく想像ができなくて。初めて二丁目のオナベバーの存在を知った時、そういう生き方があるとわかったのと同時に、そういう生き方だけしかないと悲しくなったことがありました。そういう意味で、メディアにいろんなLGBTの人たちが出てくるのはいいことですよね。

勝間:最近だと「おっさんずラブ」は良かったですね。まだまだ誇張はありますが、まずはメディアに自然に登場することが大切なので。いまはLGBT人口に対してメディア露出が少なすぎる。

オネエタレントだけでなく、アナウンサーにゲイの人を登用して、「そういえばあの人、ゲイだったよね」とナチュラルにいわれるくらいがいいと思います。LGBTをオープンにしながらも社会で活躍する人を見かける機会が増えれば、自然と差別は減っていくんじゃないでしょうか。

杉山:堂々としたロールモデルがいれば、カミングアウトもしやすくなりそうですね。

企業は、声を上げる人にペナルティを与えないで

杉山:ダイバーシティ促進のために、企業には何ができるのでしょうか。

勝間:まず、各種のサポートを適応させていくことが第一です。LGBT当事者が人間として、ほかの人と同じ扱いを受けていると思えるようにする。

あとは法整備。LGBTに限りませんが、差別行為には罰則規定を設けること。差別が損だと示すことが、一番簡単で徹底的な方法だと思います。

繰り返しにはなりますが、結局は差別を受けている側が沈黙を破るのが一番有効。いままで「仕方がない」で済ませていた問題に、当事者が「それはおかしい」と声をあげていく。もちろん、傍観者だった人も同じです。

杉山:渋谷区の同性パートナーシップ証明書の発効はその内容自体よりも、今までそこには「いない」という前提で語られていたLGBTの存在を、行政が条例という形で公に取組んだことで「LGBTが存在している」と前提条件が変わったことが一番大きな功績だと思います。

勝間:一気に全員の意識を変えるのは難しいので、まずは沈黙を破れる人から声を上げていかなければならない。そのためには、沈黙を破ることにペナルティを与えないことが絶対条件です。

カミングアウトしない人にとって、声を上げるメリットは少ない

勝間:私がテレビの対談で「それは差別ですよね」と発言すると、コメンテーターに「そういう発言は、君の印象を悪くするよ」とよくいわれるんです。他人の発言を取り締まる行為は「トーンポリシング」と呼ばれるのですが、これが一番よくない。自分が聞きたくないことを相手がそれ以上喋らないように取り締まって封じ込める風潮は、本当に許せません。

LGBTを隠している側の心境としては、それだけで何かに困ることはあまりない。だから、カミングアウトに踏み切るメリットは本当に少ないんです。パブリックから差別されると思うと勇気もいりますし、面倒な気持ちもありました。

でも、先ほども話したように、いざカミングアウトをしてみてもほとんど影響がないことがわかりました。沈黙を破る決断をする人のことを、大切にしてほしいですね。

杉山:LGBTをカミングアウトされた時の記事で「今までで一番勇気のいることだった」と書かれていましたが、そういうことだったんですね。

勝間:沈黙は差別に加担していることと同じ。また、自身が差別をしている、あるいはされていることに気づけない場合もあります。それを解消するためには、差別にNoを突きつけていいとわかってもらうしかない。だからこそ、できる人から声を上げるのが大切なんです。

対談後半は明日公開。勝間和代が「杉田水脈発言」の核心を語る。


杉山文野◎1981年東京都出身。フェンシング元女子日本代表。トランスジェンダー。早稲田大学大学院教育学研究科修士課程終了。「違いを知り、違いを楽しむ場をつくる」を目標に掲げ、飲食店の経営や全国各地での講演を行うと共に日本最大のLGBT啓発イベントNPO法人東京レインボープライド共同代表を務める。日本初となる渋谷区・同性パートナーシップ証明書発行に携わり、現在は渋谷区男女平等・多様性社会推進会議委員も務める。

文=野口直希 写真=小田駿一

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