重大事故の背景に「睡眠不足」 研究で明らかに

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睡眠が精神状態にとってどんなに重要か、脳機能を正常に保つうえでどんな役割を果たしているか──こうしたことについて科学的な解明が進みつつある。以前よりも睡眠について真剣に考えるようになった人もいるかもしれない。その一方で、睡眠など時間の無駄だ、と考える人もまだ存在する。仕事をしたりテレビを観たりといった有意義な活動ができないからだ。

ミシガン州立大学の研究者はこのほど、睡眠不足に関しては過去最大規模となる研究を新たに実施した。その結果、正常な認知機能にとって睡眠が必須であることが、また裏付けられることになった。睡眠が十分にとれていれば、作業途中になんらかの中断が入っても、脱線することなく、もともとの作業に戻りやすいというのだ。

この研究は、『Journal of Experimental Psychology: General』に2018年9月27日付けで発表された。

研究論文では、日常的なミスから、悲惨な結果を招いた事例にいたるまで、睡眠不足が関係していたことが指摘されている。例えば、チェルノブイリ原子力発電所事故や、石油輸送船エクソン・バルディーズ号原油流出事故、スペースシャトル「チャレンジャー号」爆発といった事故のことだ。

研究論文を執筆したキンバリー・フェンは、「外科手術や公共交通機関、さらには原子力発電所におけるミスや事故を見てみると、睡眠不足が人的エラーのおもな原因のひとつとなっている」と述べた。「ミスが許されない責任の重い職業についている人の多くが、睡眠不足の状態だ。手順が厳正に定められている仕事に従事する人の4分の1近くが、仕事中に居眠りをした経験があることが研究で判明している」

研究チームは、中断が入ったあとに作業を再開するとき、ひと晩の睡眠不足がどのくらいの影響をおよぼしうるのかを見る実験を行った。まず、234名の被験者が夜間に研究室へと集められ、決まった順番で行う認知的作業に取り組んだ。作業はときおり中断され、被験者たちはそのたびに中断前の段階を思い出し、そこからふたたび正しい順序で作業を進めるよう求められた。

その後、被験者の半数は帰宅して睡眠をとったが、残りの半数はそのまま研究室でひと晩、眠らずに過ごした。翌日、被験者全員が、ふたたび作業を最初から最後まで行った。その結果、睡眠をとらなかった被験者のうちの15%というかなりの割合が、「指示を受けたとおりの基準、ならびに前夜には達成できていた基準を達成できなかった、またはそうする意欲がなかった」と研究論文には書かれている。

一方、睡眠をとった被験者でそうした状態にあったのはわずか1%だった。さらに、睡眠をとらなかった被験者のパフォーマンスは、時間とともに低下した。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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