ただならぬ緊張の中、疑惑を追求されて窮地に追いやられていくエリザベスに、味方する証言者が二人現れる。上司のシュミットと、エスコートサービスの男性だ。
いずれも、エリザベスという人間に一抹の不審や不安を覚えていた男たちであり、彼女の心証を更に悪くすることができる立場にいた。彼らが仁義を通したのは、エリザベスへの同情からではなく、一人の仕事人としての深い敬意が生まれていたからだろう。
最後の大どんでん返しはもうご存知の方も多いだろうが、触れないでおこう。身を切って骨を断つことを選んだエリザベス。悪魔のように用意周到に爆弾を仕掛け、最高に効果的なかたちで大勝負に打って出たその姿勢は、政界で出世するため保身に汲々としている議員たちとは好対照だ。
元会社を辞める時の彼女のキメ台詞は、「私は信念のために働き、眠る」だった。最後、自らの罪を引き受けてそれまでとは一変したなりで現れるヒロインの姿は、「私は何のために働くのか。何のために闘うのか」を、私たちに改めて問いかける。
連載 : シネマの女は最後に微笑む
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