「現在のAIをめぐる状況は2000年頃のドットコムバブルに近い。当時はあらゆる企業が先を争って、インターネットのサイトを立ち上げた」と語るのは、AI関連企業に旺盛な投資意欲を燃やす、Amino CapitalのマネージングパートナーのSue Xuだ。
「中国のテック企業大手らは全て、AIファーストを掲げている」と彼は語る。
しかし、AIが成熟期を迎えるまでには、まだ長い時間がかかりそうだ。「我々はAI革命の、ほんの入口にさしかかっているに過ぎない」と話すのはAME Cloud VenturesのNick Adamsだ。同社は中国のAI分野のユニコーン企業「センスタイム」に出資を行っている。
先日、サンフランシスコで開催されたテック系イベント「Silicon Dragon」には、多くの中国人投資家らが参加した。彼らの多くはAI分野では現在、中国がアメリカの先を行っていると確信しているが、その状況は長くは続かないとの見方もある。
「現状ではより多くのデータを持つ中国がAI分野で先行している。しかし、将来的には顔認識や音声認識分野のマシンラーニングにおいては、小さなデータセットの重要性が増すことになる。そこで強みを発揮するのが、長年のリサーチの蓄積を持つシリコンバレー企業たちだ」とAdamsは述べた。
Adamsによると、シリコンバレーには優秀な人材を引き寄せるパワーがある点も強みだという。「テック業界で働く人の誰もがシリコンバレーを目指しているといえる。しかし、中国に誰もが行きたがるかというと、答えはノーだ」
中国と米国の双方で、AIはテクノロジー業界の人々の最大の関心事になっている。バイドゥキャピタルのパートナーのNan Zhouは「中国ではタクシーの運転手でも、日常的にAIについて話している」と述べた。
中国の都市部では至るところに監視カメラが設置され、個人の顔写真を撮影し、政府はそのデータを身元確認や治安維持に活用している。
しかし、データの収集にはプライバシーの問題の懸念がつきものであり、シリコンバレーは中国よりもその懸念が大きいのが現実だ。米国におけるプライバシー問題への懸念の大きさが、今後のAIの発展の妨げになるのか、むしろメリットとなるのかが、今後注視すべきポイントといえる。