ビジネス

2018.10.13

長期滞在観光客が「体験」の先に求めるもの NZの雪山から学ぶ

最高の天気に恵まれたスキー場「ザ・リマーカブルズ」


佐賀県の有田町にある幸楽窯(こうらくがま)では、2014年からアーティストによる滞在型制作「アーティスト・イン・レジデンス」をスタートした。自社工房を24時間解放し、そこにある材料や道具のみならずプロの職人のサポートを受けながら作品作りに没頭できる環境を提供している。

 
幸楽窯の工房内で制作に励むアーティストたち。夜型のアーティストに配慮し、工房を24時間解放している。

限られた条件を駆使し、小規模でスタートしたこのプロジェクトは、アーティスト同士のつながりやSNS等の口コミで評判が広がり、これまでに60名のアーティストを受け入れてきたそうだ。有田に新しい風が吹くと同時に、アーティストが帰国後に作品を販売することで、世界に有田焼をアピールできるという相互メリットもある。


工房のそばには元女子寮のゲストハウスを完備。

日本は観光資源が豊かな国である。高いポテンシャルに恵まれているにもかかわらず、それをビジネスとして活かせていない現状は、日本各地で見受けられる。

いまインバウンド業界で豊富な資源を活用しきれていない原因は、受け入れる側である僕たちの長期旅行の経験不足である。この記事を読んでいるあなたも、2週間以上の休みをとって旅に出るのはなかなかハードルが高いことではないだろうか。

僕たちの旅行といえば、国内なら1〜2泊3日、海外でも1週間〜10日程度。そういった短期旅行に慣れ親しんでいる日本人が、海外からの長期旅行者のニーズに寄り添い、満足度の高い提案することは難しい。自ら長い旅に出て、世界各地でゲストとしての経験を積むことが重要である。

ただそうはいっても、すぐに長期休みをとることも、海外からのゲストとの接点を一気に増やすのも簡単ではない。ならば、まずは身近にある素材を味方につけるのはどうだろうか。

海外に長期旅行に出るのが難しいのなら、長期旅行の経験豊かな人や企業と手を組み、ゲストを迎え入れる施策を打つ。自分ひとりで、もしくは自社で長期滞在のゲストに対応する余裕がないならば、エリア全体で体制を整え、協力し合う。いきなり背伸びをするのではなく、できるところから着実に、確実に進めていくことこそ、いま日本に必要な長期滞在観光客を増やす鍵だ。

文=青木 優 構成=梶山ひろみ 取材協力=徳永隆信(幸楽窯)

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