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2018.10.11

94歳まで歌い続けたシャルル・アズナヴールが教えてくれたこと|出井伸之

クオンタムリープ代表取締役 出井伸之氏

人生は岐路の連続。最良の選択でチャンスを呼び込むためには、自身と深く対話し、自分の中にある幸せの価値観を知ることが重要である。この連載は、岐路に立つ人々に出井伸之が送る人生のナビゲーション。アルファベット順にキーワードを掲げ、出井流のHow toを伝授する。

今回は、ビートルズの名曲「Yesterday」とそれに似たフランスのシャンソンについて(以下、出井伸之氏談)。


ずっと前のことを、まるで昨日のことのように思い出すことがある。1960年代のことについて、これまでに何度か触れてきたが、まさにその時代が私の青春だったのだと思う。様々なシーンが、つい最近のことのように目に焼き付いている。

これまで、私は、音楽とは切っても切れない生活を送ってきた。小学生から高校生まで習っていたバイオリン、家やコンサートで聴いたクラッシック音楽、さらにソニーに入社して1年間休職し、ジュネーブ大学院付属研究所に留学した時には、オペラ座の演目が変わるごとに観に行った。そのころ私は20代だった。

とりわけ、街中で流れていた曲が、今や世界で最もカバーされているビートルズの「Yesterday」だ。今でもこの曲を聴くと、当時のヨーロッパを思い出す。1960年代、それは混乱の時代だった。

あの時、を思い出させる曲

1968年にフランスで5月革命が勃発すると、あっという間に世界中に反体制運動が広がった。ちょうどその年に駐在となりパリに住んでいた私は、社会に対し様々な思いを持つ若者たちが大規模なデモを行うのを目の当たりにした。揺れるヨーロッパにいて、たくさんの音楽を聴いた。

フランスの音楽と言えば、シャンソンだ。独特なアンニュイさを描くメロディや歌声は、パリの街並みや空気感と重なる。バーなど至る所で、シャンソンが流れていて、日常でよく耳にした。この連載の「D=Dalidaの記事でも書いたが、オランピア劇場にもよく通った。

「Yesterday」のように、“あの時、若い時は、”と昔を振り返る曲は、シャンソンにもある。フランスを代表する歌手、シャルル・アズナヴールの曲「Hier Encore」が、まさにそうだ。これは、私の青春そのものでもある。


シャルル・アズナヴール(1968年撮影、Getty Images)

WIRED日本版・2017年冬号の「アイデンティティソング」の企画で私はこの曲を紹介している。和訳とともに少しご紹介したい。

「Hier Encore」(帰り来ぬ青春)

Hier encore, j’avais vingt ans,
je caressais le temps
J’ai joué de la vie
Comme on joue de l’amour et je vivais la nuit
Sans compter sur mes jours qui fuyaient dans le temps

それはまるで昨日のことのように思える。あの時は20歳だった。
一瞬のうちに過ぎ去ってしまう時を惜しむかのように、
人生を楽しんでいた。
僕らは愛することに喜びを感じ、夜に生きていた。
流れていく日々が過ぎ去っていってくことを気にもとめなかった。
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監修=谷本有香 インタビュー・構成=細田知美 写真=小田駿一 取材協力=Quantum Leaps Corporation 撮影協力=Union Square Tokyo

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出井伸之氏のラストメッセージ

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