宝物を失くした子供に何を教える? 日常でできる金融教育

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ある日、我が子が泣きながら私の所にやってきた。どうしたのかと聞くと、お気に入りの物を入れていた袋をなくしてしまったらしい。話を聞いてみると、外で落としたのではなく、家のどこかにはあるようだが、一緒に探しても見つからなかった。

中に入れていたのは、公園で拾ったドングリやキラキラのゴム、指人形や折り紙で作ったメンコなど。宝物を一気に全てなくしてしまったことが大変ショックだったようで、その日はずっと泣いていた。しかしこの出来事は、金融教育という観点でいえば、最高の教材でもあった。

「すべての卵を一つのカゴに盛るな」

投資の世界ではいくつもの格言があるが、その中でも有名なものに「すべての卵を一つのカゴに盛るな(Don’t put all your eggs in one basket)」というものがある。

1つのカゴにすべての卵を入れておくと、仮にそのカゴを落としてしまった時にすべて割れてしまうが、いくつかのカゴに分けておけば、仮に1つのカゴを落としてしまっても、他のカゴは影響を受けないというものである。

この格言を投資の世界に当てはめるとこうなる。全財産をA社の株式だけに投資していたとしよう。ある日、A社の不祥事が発覚し、A社が倒産してしまったとする。そうなると、A社に投資していた全てのお金を失ってしまう。

もし、全財産を5等分し、20%をA社の株式、残りの80%も20%ずつB社の株式、C国の債券、D社の運用する投資信託、E社の発行する社債などに分散して投資しておけば、仮に同じようにA社が倒産してしまったとしても、一度に全財産を失うことはないということだ。

今回の出来事は、子供に「分散すること」の重要性を教えるのにはとてもよい出来事だったというわけだ。

我が家にはオモチャの収納スペースはいくつも存在している。子供専用のタンスもあれば、オモチャ箱もある。遊び終わったあとにそれぞれ所定の場所に片づける癖さえ付けておけば、仮にオモチャ袋をなくしてしまったとしても、一度に全てをなくすことはなかったであろう。

モノだけではなく時間も分散せよ

まだ筆者の子供達に教えるのには早いが、分散は「モノ」だけではなく「時間」についても考えることが重要だ。

筆者の持論でもあるが、何人たりとも未来は正確に予測できない。時折、相場を先読みして儲けようというようなセミナーや教材を目にするが、筆者はそれらに対しては懐疑的である。

たとえば、投資をする際に、一度に全ての資産を投資するとしよう。将来は誰にも予測はできないため、投資した翌日に急騰するかもしれないし、はたまた暴落するかもしれない。そうなると、もはやそれは丁半博打になってしまう。相場というものは波を描きながら推移するため、一度に全資産を投資することは運任せということになる。

そこで、時間も分散することで、イチかバチかの賭けにはならなくなる。たとえば、毎月1日に同じ額を定期的に投資する。これにより、相場の上下とは関係なく、機械的な投資行動がとれるため、計画的な資産運用が実現される。
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文=森永康平

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