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2018.10.10

スタートアップはIPOを目指すべきか? ウーバー初期投資家の答え

ジェイソン・カラカニス

エンジェル投資家──日本でも「ANGEL PORT」といったサイトが登場したことで、その存在が少しずつ知られるようになってきた。

そんなエンジェル投資家の先駆けとして世界的に有名なのが、先日、『エンジェル投資家』を上梓したジェイソン・カラカニスだ。

彼は当時、無名のスタートアップだったウーバーにシード資金を投資。その後、ウーバーは急激な成長を遂げ、世界有数のユニコーン企業となった。

最近では、Forbes JAPANが開催した「30 UNDER 30 JAPAN」に選出された起業家、Anyplaceの内藤聡にも出資している。

今回、『エンジェル投資家』の邦訳出版を機に来日中とのことで取材の機会をもらったので、ジェイソンに気になっていることを聞いた。

多くのお金は何の役にも立たず、死んでしまっている

──来日されるのは何回目でしょうか?

ジェイソン:3回目です。

──日本のスタートアップについて知識もあるかと思いますが、日本のスタートアップの状況をジェイソンさんはどう捉えていますか?

ジェイソン:日本のスタートアップ全体に言えることは、もっと大胆にリスクをとって、グローバルに事業を展開もらいたい、ということです。日本国内のマーケットだけで戦っていたら、大きな成長は見込めないでしょう。

そして日本はエンジェル投資家の人数が少ない。シリコンバレーのようなスタートアップ・エコシステムを目指すのであれば、エンジェル投資家が生まれる仕組みを構築した方が良いと思います。

──ここ数年でイグジットした起業家がエンジェル投資を行うケースが少しずつ増えてきていますが、おっしゃる通り、まだまだ母数は少ない気がします。

ジェイソン:いま、アメリカでは「エンジェル投資」がひとつの仕事として認められています。これまで趣味の一貫でエンジェル投資をしていた人たちも、最近ではすべてのリソースをエンジェル投資に割き、フルタイムの仕事として取り組んでいるのです。

そんな人たちをサポートしたい──そう思い、今回『エンジェル投資家』という本を出版することにしました。日本でも、ひとりでも多くの人がこの本を手に取り、エンジェル投資家を目指すようになればいいと思っています。



──日本でエンジェル投資家を増やすために必要なことは何だと思いますか?

ジェイソン:「失敗して、手元のお金がなくなってしまったら……」と、多くの人はエンジェル投資によって不利な状況に追い込まれることを想像するかもしれません。

まずは、そのイメージを変えるべきでしょう。エンジェル投資は非常にワクワクするものです。

仮にお金がなくなり、不利な状況に追い込まれたとしても、世界で最もなクリエイティブな人たちと一緒に過ごす貴重な機会をもらえます。

もしお金を豊富に持っていたとして、特に欲しいものがなければ、すぐにエンジェル投資を始めるべきです。家にあるモノを売って手元のお金を増やしたり、貯金したりするより、よっぽど賢い。

裕福な人の多くはお金を投資せず、ただ保有しているだけ。これは世界的な問題のひとつです。

 

そうしたお金は社会の発展、人類の発展に何の役にも立たず、死んでしまっている。世界にはお金をもっとクリエイティブに使う人間が必要です。10回中、9回投資に失敗しても全く問題ない。20〜30回ほど投資する中で、1回成功すれば、投資家として大きな成功を収めたと言えます。

いま、世界中にはさまざまな課題があります。最先端のテクノロジーを駆使し、そうした課題の解決策を考案する起業家は増えていますが、彼らを支援する投資家がいなければ結果的に課題は解決しません。

だからこそ、ずっと銀行口座にお金を貯めておくのはつまらないのです。貯金の5%〜10%を投資にまわしてみたらどうでしょう?

お金は少し減るかもしれませんが、何もせずに死んでいくよりよっぽど良いです。特にお金持ちで年齢を重ねている人は投資して世界を助けるべきでしょう。
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写真=小田駿一

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