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2018.10.10

スタートアップはIPOを目指すべきか? ウーバー初期投資家の答え

ジェイソン・カラカニス


──ジェイソンさんは創業間もないウーバーに投資し、莫大なリターンを得ました。それによってお金に対する意識は変わりましたか?

ジェイソン:この前、日本を訪れたときは、1泊75ドルの六本木にあるホテルに泊まっていました。ただ今回はアルモントホテルの最上階に泊まったので、そういう意味ではお金に対する意識は変わっているかもしれませんね(笑)。

ただ、本質的には何も変わっていません。わたしはさまざまなことに挑戦して、努力し続けることが好きです。お金は使わなければ逆に邪魔になります。だから、自分が得意なことに集中しています。本を書いたり、話したり、投資したりすることが得意。とりわけ投資は大得意です。

ウーバーでの成功によって、より自分が得意なことに集中できるようになりました。今年の投資件数は50件でしたが、来年は100件を目指しています。そのようにどんどん自分で挑戦しています。絶対に自己満足したくないですね。

6回失敗しても、7回立ち直って挑戦すればいい

──スタートアップ・エコシステムにに関して、日本とシリコンバレーを比べたとき、もっとも大きい違いはどこにあると思いますか?

ジェイソン:失敗に対するセーフティーネットがあるかないか。これが大きな違いだと思います。

シリコンバレーではリスクを負ってでも投資する人が多く、失敗することを怖がってすらいない。もし失敗したとしても、「失敗しました。もっとお金が必要です」と言い、恥に思うこともありません。

一方で日本は違いますよね。なかなか同じことは言えないと思います。

日本はもっと失敗を受け入れて、リスクを負える社会をつくっていった方がいいでしょう。アメリカでは、無資格で愚かな人間だったとしてもリスク負って大成功した例はあります。リスクを負わなければ、世界を変えることができない。

一生懸命努力して、お金を有効に使っていれば、失敗しても大丈夫。これは私からのメッセージです。

──ジェイソンさんにおける、失敗の定義は何でしょうか?

ジェイソン:挑戦しないことが、私にとっての失敗です。挑戦し、その結果が成功だろうと、失敗だろうと、経験として将来の自分に活きてくる。多くの人は挑戦することを怖がっています。

何もすることなく、ただただ年をとって後悔する人もいる。それが本当の失敗です。いい家族や友達がいて、世界のためにいいことをやろうと努力している人は成功します。

だから、私もいい親、いい友達、いいリーダになるように努力しています。ビジネスでは、挑戦して一生懸命に働くことが大事です。失敗したとき、また立ち直って頑張る。6回失敗しても、7回立ち直って挑戦する。それが何より大切です。

スタートアップはIPOを目指すべきか?

──ジェイソンさんが起業家に投資する際、最も重視していることは何でしょうか?

ジェイソン:重視しているポイントはいくつかあります。もっとも重要視しているのは事業への情熱と問題解決の強い心を持っているかどうかです。熱心な起業家でなければ、いつか諦めてしまう。すぐに諦めなかったとしても、将来的に諦める可能性が高い。才能があり、諦めない起業家は良いですね。

あとはお金を目的にしていないかどうか。たくさんの起業家と話をしていると、中にはお金だけを目的にしている起業家に会います。そういう人は困難を乗り切れない。

お金を稼ぐ方法であれば、他にいくらでも方法があるので、わざわざ起業家にならなくていい。稼ぐのであれば、グーグルやソフトバンクに就職して働けばいい。リスクを負わず、簡単にお金が稼げるでしょう。

しかし、起業家は違う。リスクを恐れず、諦めないことが何より大切です。加えて、大きな成長を望む気持ちも必要ですね。月に1%しか伸びないスタートアップは世の中に対して、あまり重要な役割を果たせない。スタートアップは毎月20%〜30%の成長が求められます。

5%〜10%の成長も悪くないですが、最終的に20%の成長を目指すべき。そういうスタートアップこそが世界を変えられるのです。
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写真=小田駿一

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