経済・社会

2018.10.10 06:00

日銀と中国の「五十歩百歩」


消費統計も当てにならないようだ。これは地方の水増し数値とは逆に、過少に出るものらしい。対象にサービス消費が含まれず、膨大な数量の少額ネット消費も除かれているからだ。巷間、中国の消費が停滞気味といわれているが、それを鵜呑みにしてはいけない。
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「あと、日本人には想像できないものがあるわね。密輸ですよ」。広大で国境線が長い中国である。監視の目が行き届かなくても不思議ではない。お米の密輸が少なくとも年間100万トン、砂糖にいたっては200万トンが密輸されていると囁かれているようだ。

200万トンといえば日本全体の消費量に匹敵する。密貿易で大儲けした連中が、国境付近に学校などを作って地域に貢献する一方、非合法の賭場開帳で荒稼ぎをしているとも噂される。

統計というものは悩ましい。調査対象を全て把握できるわけではないし、相当程度推計によらざるを得ないものもある。手法や対象項目の変更に伴って、過去データとの連続性がなくなってしまうものもある。したがって、統計数値と生活実感とに開きのあるものも出てくる。
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統計数値の活用法も一筋縄ではいかない。やり方によってはある種の世論操作も可能になる。アベノミクスの成果についてもそうだ。雇用が増え、消費が活発化し、盛り場はバブルの様相を呈しているのに、やれ給料が上がらない、それ格差が広がったと、反対論者はネガティブな数値ばかり取り上げたがる。

「でも、日本の統計は総じて誤差脱漏が少ないんじゃない? 少なくとも中国よりは当てになるんじゃないかな」。ラムチョップに齧り付きながら尋ねる私を見て、袁さんはにやりと応えた。

「日本銀行の投資信託の統計ってどうなんですか? 家計の保有残高を109兆円から76兆円と30兆円以上下方修正したんでしょ」。30兆円といえばチリやフィンランドのGDP額に相当する。返答に窮する私を尻目に、袁さんはカクテルのお代わりを注文していた。

連載 : 川村雄介の飛耳長目
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文=川村雄介

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