エドワード7世に捧げられた「ジンジャー・リキュール」

キングスジンジャー:リキュール

祝杯をあげるとき、自分自身の時間を楽しむとき、孤独を噛みしめるとき......一杯の酒と向き合う空間に身をおくひとときは、明日への活力となる。


ロンドン市内、セント・ジェームス ストリートは、歴史のあるテーラーや高級紳士靴、理髪店など、小体だが高級な店が居並ぶシックな趣の通りのひとつ。ここに佇む、深みのあるブルーグリーンのファサードが印象的な店がBB&R(ベリーブラザース&ラッド)。ロンドン最古のワイン商だが、先日、映画『キングスマン:ゴールデン・サークル』の撮影ロケ地として使われた、と言えば「ああ」と膝を叩く人も多いのではなかろうか。

このBB&Rはエリザベス女王とチャールズ皇太子のウォレントを受けており、王室御用達のワイン商として、その鋭敏な“鼻と舌”を活かしたジンやラムなどユニークなプレミアムスピリッツも多く生み出している。そのひとつが今宵の主役、キングスジンジャー・リキュールだ。

王室御用達のワイン商らしく、ボトルにはエドワード7世(在位1901-1910)が描かれている。このエドワード7世はファッション、グルメ、競馬やヨットなどに通じ、多趣味で華やかな生活に興じていたが、もうひとつの興味が幌なしのダイムラーを駆ってのドライブだったとか。ロンドンの寒い冬でもかまわず幌なしの自動車で出かけるため、王の身体を気遣った侍医がBB&Rを訪れ、「国王の身体を温め、滋養に富んだリキュールの開発」をオーダーしたのが、このキングスジンジャー・リキュールの始まりであった。

新鮮な生姜をアルコールに4週間漬け込み、レモンオイルを加えたキングジンジャー・リキュールは、生姜のスパイシーな刺激と弾けるレモンの香り、そして甘さのバランスがとれたヨーロッパらしい優美な仕上がりの1本だ。

このキングスジンジャー・リキュールはストレートで楽しむのはもちろん、アイラモルトやカモミールティー、紅茶などとも相性がよいそうだが、この日、No.3 ロンドン・ドライジン、フレッシュレモンジュースとシェイクした「キングスジンジャー・コリンズ」を作ってくれたのは渋谷の名門バー「BAR石の華」オーナーバーテンダーの石垣忍氏である。

ひと口飲みこめば身体がほんのり温まり、えも言われぬ多幸感が胃の腑へとすべり落ちていくような、この味わいをかのエドワード7世も堪能していたのだろうか。ちなみにこの王はその後風邪を引くこともなく華麗な女性遍歴を重ね、生涯の愛人は100人を数えたのだとか。念の為付記しておく。

<KING’S GINGER LIQUEUR>

度数:41%
容量:500ml
価格:2300円(参考小売価格)
問い合わせ:ジャパンインサイト(03-6421-4988)

<今宵の一杯はここで!>
BAR石の華

再開発の進む渋谷駅からほど近い「石の華」。店名の通り、石を随所に配した落ち着いたインテリアで若者の街渋谷とは一線を画している。契約農家から取り寄せるフルーツを使うカクテルメニューには「二日酔い防止」「若返り」など健康に気遣った効能が明記され、一見や女性客にも親切。各種カクテルコンペでも受賞を誇る石垣忍氏による1杯を味わいたい。



住所:東京都渋谷区渋谷3-6-2 第2矢木ビル B1
電話:03-5485-8405
営業時間:18:00 - 翌2:00
定休日:日曜・祝日

photographs by Yuji Kanno | text and edit by Miyako Akiyama

この記事は 「Forbes JAPAN 世界を変える「30歳未満30人の日本人」」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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