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元テレビディレクターが行く、「世界の現場」



パレスチナでは不安定な電力供給状況のため、1日3〜4時間程度しか電気が使えないため、日常生活にも様々な困難が生じる。マジドさんが開発した太陽光発電キットは、パレスチナの人々の暮らしを支える新たなツールとして期待を浴びている

70年前のイスラエル建国により故郷を追われたパレスチナ難民とその子孫の数は、現在約530万人及ぶと言われている。人々の移動や物資の流通などが厳しく規制されてきたうえ、イスラエル寄りの政策を押してきたトランプ政権が、パレスチナや国際社会の反対を押し切って聖地エルサレムをイスラエルの首都と認定した

さらに先月末には、米国務省が、教育や医療サービスを提供してきた国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への拠出金を完全に止めると表明するなど、パレスチナを巡る情勢は一段と困窮を極めている。


大規模な戦闘が相次ぎ、多くの建物が破壊されたパレスチナ自治区では、しかし、再建に必要な資材が不足しており、未だ復興への道は遥か遠い

しかし、マジドさんは「パレスチナ難民」と評されることに抵抗を覚えるという。支援に頼って生きざるを得ないガザの歴史的な背景にもどかしさを抱えながら、「難民」として補助を受けることで成立してきた暮らしから抜け出すためにあらゆる知恵を絞る。

自らビジネスを起こしてお金を稼ぐ術を得ることで、人間としての自尊心を取り戻せるとの強い信念がそこにはある。大学を卒業しても就職先がないパレスチナの若者たちに、希望を失うのではなく自ら起業して未来を変えてゆく気概を持って生き抜いて欲しいというのが彼女の願いだ。

常に微笑みを絶やさないその穏やかな外見からは想像もつかないほど、内なるエネルギーを秘めるマジドさんは、真っ直ぐな視線でこう話す。



「人生のゴールは自由になることです。ガザから出た方がビジネスの可能性は広がることは十分わかっています。それでも私は、ガザの起業家としてパレスチナを変えたい。私は外に助けを求めようとは思っていません。強く生き抜く術を持っている私たちを見て、自然に何か一緒にやりたい、そう思ってくれる人たちが出てくれれば、大きな変革が起こせると信じているのです」

文・写真=海野麻実

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