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2018.10.05

ネットフリックスが何より重視する、コンテンツへの飽くなきこだわりとは?

コーポレートコミュニケーション ディレクターの松尾崇


オリジナル映画や約40〜50分ほどのオリジナルドラマに始まり、最近は20分ほどの短尺ドラマ、知られざる現実を鋭く描いたドキュメンタリー、世界中で愛される日本のアニメと最近、ジャンルを拡大しているネットフリックス。 注力しているジャンルなどあるのだろうか。

「今はさまざまなジャンルを増やそうとしているところです。ドラマや映画、ドキュメンタリーやアニメのほか、台本のないリアリティショーなども最近の注力分野です。台本がなくてバラエティ色の強い作品、これは世界中で視聴される傾向にあるので、今後も継続的に見ていただける作品は増えていきそうです。」
 
コンテンツ自体の面白さもそうだが、ユーザーを惹きつけて離さない特徴は他にもある。それが視聴体験だ。

ネットフリックスで視聴するコンテンツは各自が設定をすればイントロがスキップできたり、エンドロールをスキップして次のエピソードをシームレスに再生できたり、とにかくユーザーフレンドリーなUX設計となっている。もちろん、TV、タブレット、携帯電話等様々な機器で視聴可能であることは言うまでもない。

また、ひとつのエピソードの尺もエピソードごとに異なる。



「ネットフリックスは地上波と違い、必ず54分などという決まった時間内にひとつのエピソードを終わらせる必要はありません。全エピソードの長さを同じにしたり、最後にクリフハンガー(続きを期待させる終わり方)を毎回のように入れたりするのは、作り手側にとってクリエイティビティ(創造性)を阻害する可能性が生じます。 それを意識せずにコンテンツを制作できるのはオンラインストリーミングサービスならではの強みかもしれません。また一気見(ビンジ ウォッチング)が楽しめる構成にしたことで、登場人物のキャラクターも数話かけてじっくり完成させていくことができる。そこはネットフリックス独自のコンテンツ制作における特徴のひとつだと思います」

当たる自信があった「ハウス・オブ・カード 野望の階段」
 


『ハウス・オブ・カード 野望の階段』は初のオリジナル作品として登場し、大ヒットを記録。ネットフリックスの名を世界中に轟かせたコンテンツだ。

11月2日に最終となるシーズン6の配信も控えている。エミー賞では、9部門でノミネートされ、ネットドラマとして史上初となるドラマ部門監督賞ほか3部門を受賞するなど、世界中を熱狂させた同作だが、ネットフリックスとしてはオリジナルコンテンツを充実させ始めた初期の頃からの代表作。

果たして、勝算はあったのか。
 
「我々は1997年の創業から約10年間、オンラインのDVDレンタルサービスだけをおもに提供していました。その10年間でクリックしてもらえるインターネット上のUIにおける作品の見せ方や顧客の消費行動などから、さまざまな知見を蓄えていました。その知見をもとに、30〜50代の男性をターゲットに役者を揃え、デヴィッド・フィンチャーを監督にした政治的サスペンスドラマを制作すれば、高確率で当たるというのはある程度、わかっていました」
 
また松尾は『ハウス・オブ・カード 野望の階段』の制作秘話として、こんなエピソードを話してくれた。

「業界的にはドラマを制作する際、必ずパイロット版の第1話を制作してから意思決定するのですが、ネットフリックスは監督に『パイロット版はいらない。2シーズンを確約するから制作してほしい』と依頼をしたそうなんです。思い切った決断ですよね。」
 
『ハウス・オブ・カード 野望の階段』はシーズン6の配信が決まっているなど長く続いているが、すべての作品がそういうわけではないだろう。シーズンが続いていく作品の条件はあるのだろうか。松尾は言う。
 
「さまざまな数字を調べた上でシーズンを続けるかどうかは決定します。単純に視聴回数だけで決めることはありません。もちろん長く続けば、私たちもユーザーも嬉しいですが(笑)」
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文=園田菜々 写真=若原瑞昌

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